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□それは夏に咲く
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『勘ちゃんが花になる夢を見たんだ。』


廊下で談笑しながら歩いてる途中竹谷が唐突にそう切り出した。

『俺が、』

『うん。』

『花に、』

『うん。』

幼子みたいにこくこくと頷く竹谷はなんも考えてない様な顔をしていて、なんか難しい事を考えている様にも見えて、ちょっと歩みを止めたら、竹谷は、ととと、と数歩進んでで立ち止まる。

『勘ちゃんが朝起きたら小さな花になって、俺はそれを育てていた。』

竹谷はこちらを見ず話すから俺は竹谷の量の多い痛んだ髪を見ている。

『桃色の小さな花で、でもとうとう萎れてしまったんだ。』

『それで、』

『種が残ったからまた植えた。そこで目が覚めた。』

『はは、なんだそれ。』


竹谷はくるりと振り返ってにこっと笑う。俺に合わせたんだ、と思った。


『萎れた勘ちゃんからの種から出来た花って、それ勘ちゃんなんかな。それとも別の何かなんかなって思って。』

『うん。』

『朝から、ずっと考えてたんだけど、どう思う。』

『ははは、お前馬鹿じゃん。』

どう思う。と言うのは、きっと夢に対する疑問についてなんだろうけど俺は和えて無難かつ粗野な感想をもって笑い飛ばした。


『でも、大事に育ててくれて有難う。俺ちょっと感激だわ。』

ぎゅっと竹谷を背後から抱きしめれば、暑いよ、離せよ、とケラケラ笑う。


飲み込んだ答えとしては、その種から生まれた花はきっと俺ではない。そして、それでも竹谷は大事に育てるんだろう。

『お前のそういうとこ好きだよ。』

『は、何が。』

きょとんして、そして『好き』の単語にちょっとだけ照れた竹谷にほお擦りをしたら、暑い、とまた文句を言われた。




それは夏に咲く




勘竹って中身の無い会話してそう。それで勘ちゃんは直ぐにイチャイチャに持ち込みそう。つまり馬鹿っぷるなんや。
end.


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