桂小太郎


□飾り窓の少女
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白い朝。
もう三月だというのにまだまだ朝の寒さは厳しくて、うっすら霜が下りている。
それでも寝床から潔く抜け出し、冷たい床を窓辺へと歩く。
窓を開けると冷えた空気。
ほつれた髪を手で整えながら、じっとその時を待つ。
本当は顔を洗って髪もきちんと結って、そうやって綺麗な格好で待ちたいのだけれどそれは我慢。
偶然…、あくまでも早朝の些細な偶然でいたいのだ。


冷たい空気を浴びながら待つこと数十分、遠くの朝もやの中に既に見慣れた色が浮かんできた。
途端に騒ぎ出す胸、そして全身が粟立つ感覚。
それでも頑なに偶然の振りを決め込んで、二階の窓から下の景色を眺め続ける。


徐々に浮かび上がった紺色は、今朝も当たり前の様に清々しい。
白い頬に揺れる黒髪が、まだ弱い朝陽を浴びて静かに輝く。
腕を組み、正しい姿勢で正面を見据えるその瞳は何を見ているのか。
ハタハタと一定のリズムの足音が、私のいる窓の下を通り過ぎていく。
…そして、おしまい。
景色が現実に戻り、いつもの一日が始まる。
たまたまこの窓の下の通りが毎朝の散歩コースであろう彼を眺めて胸をときめかせるのが私の日課だった。
いつの日か…、そんな馬鹿げた期待をぶら下げたまま。




さてと…、過ぎ去ろうとしている後ろ姿を惜しみながら窓を閉めようとした途端、不意に朝もやが私の鼻をくすぐった。

クシュン!

慌てて口を塞いだが、静かな朝には決して溶け込まない雑音。
しまった…
恐る恐る通りを見下ろすと、案の定、彼がこちらを見上げていた。
硬直する私を不思議そうに見つめていた彼の目が、やがて優しく細められる。
そして、

「おはよう。」

凛とした声が私に投げ掛けられた。
気付かれた、…いや、見てくれた。

「あ…、お、おはようございます!」

これ以上ないくらい上擦った声で挨拶を返し、久々となる笑顔を浮かべてみた。
そんな私に彼は妬けるほど素敵な笑顔を見せ、そしてまた静かに歩き出した。
 
 
 
 

 
 
 
 
遠去かる後ろ姿を見送りながら、そっと窓を閉めた。
彼の声が、彼の笑顔が、頭に貼り付いて薄れない。
期待してはいけない思いが膨らんでいく。
彼なら、私が見たかった景色を見せてくれるかもしれない。
彼なら…
きっと彼なら…
捨てたはずの期待は既にパンパンに膨らみ、私は進むことを決意した。


天井を見上げ小さく手を振ると、再び窓を開ける。
甘い未来の匂いがした。









end1.

















◎あとがき◎

実はコレ、続きます(^^ゞ
しかも『短編(受け)』の方で。
性的な匂いは全く出しませんがCP表現はあるので苦手な方はココまでで(ごめんなさい!

これはこれで、桂さんロックオンして恋をスタートさせた女の子、という話で成立するかな。


とはいえ、夢と腐を跨ぐのってどうなんだろう?と私自身ハラハラしているので、苦情やら意見やらがきたら考えます。



2011.3.11

 

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