アネモネの恋
□6:情報
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山崎が、気になる情報を掴んできた。
『大物攘夷志士の首と引き換えに、幕府の裏実権を握る交渉に出ようとしている天人がいるらしい』
まだ確かな情報じゃねぇ、だが…
気に入らねぇ。
攘夷志士の首なんざどうでもいいが、俺ら人間を手土産に人間に話を持っていこうとしている奴らが胸糞悪い。
その交渉に乗るようなことがあったら、上の連中にも吐き気がする。
一体この国はどこまで腐ってやがんだか…
まぁ、まだこの情報が確かなものだとわかったわけではないが。
大物攘夷志士、…か。
即座に二人の顔が頭に浮かぶ。
高杉晋助と桂小太郎。
どちらもさっさと片付けてやりたい奴らだが、天人の手土産にされんのはなんとなく腹立たしい。
大物攘夷志士が奴らを指しているのかは定かじゃねぇが、俺達が早く引っ捕らえちまうのにこしたことはねぇ。
とりあえず桂だな。
今まで以上に厳しい警戒を敷かねぇと…
仕事サボって堂々と昼寝してやがるあの馬鹿にも伝えとくか。
「起きろ総悟、殺すぞ。」
「なんでィ土方さん。マヨでも切らしてご機嫌ナナメですかィ?」
ムカつくアイマスクをして寝そべったまま答える総悟。
ああチクショー、更に気分が悪くなった。
「厳戒体制だ。今まで以上に桂を追うぞ。」
「天人の連中に手を出されんのがそんなに嫌ですかィ?」
「……知ってたか。」
「俺だって情報をすぐに聞けるポジションにいるんでね、アンタだけが特別じゃないんですよ土方コノヤロー。」
「わかってんならサボってねぇで働け。」
ムカつく総悟をぶん殴ってやりたかったがやめた。
なんだか今は、人間同士でやり合う気分じゃねぇ。
ハァ……
溜息をついて立ち去ろうとした俺に、ノロノロと起き上がりながら総悟が言った。
「その天人、見た目は俺ら人間と区別つかないってことらしいじゃねぇですかィ。案外、もう既にお近づきになってるかもしれやせんねェ、…大物攘夷志士に。」
つづく
2010.7.14