□火花は散らない
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いつだって、意識の片隅には君が。

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「ぃ…った!」

美奈子の声がスタンドに響く。

「どないしたん!」

慌てて駆け寄ると、へにゃ、と笑んでひらひらと手を振った。

「静電気がばちっと」

「脅かすなや…」

身体の中から空気が抜ける。

(いっつも、なんかあったらってこっちが気にしてるん、全然気付いてへんのやろな…)

こっそりため息を吐いた。

彼女がこのバイトを始めて、もう半年になる。

初めてバイト先で顔を合わせた時は物好きな子がいるものだと驚いた。

が。

この物好きな少女はたった半年でぐいぐい彼の中に入ってきて、がっちりとど真ん中を掴んでしまった。

「ほら、貸してみ?」

手を差し出す。

「え、大丈夫だよ、ただの静電気だし」

ちょっとびっくりしただけ、大きな声出してごめんね?

身長差がそうさせることを分かっていながら、毎度毎度、彼女の上目遣いはわざとなのかと疑ってしまう。

それ程に、ヤバイ。

「大丈夫な訳あるかい。ここをどこやと思てんねん」

彼の言葉に彼女はきょとんと首をかしげる。

「静電気のちっさい火花が気化したガソリンに引火することもあるんやで。自分、黒焦げになって死にたいんか?」

敢えて語気を強めて言う。

彼女には怖い思いをして欲しくないから。

嘘、と呟く彼女の顔が少し青ざめて見える。

やば、脅しすぎたか。

「せやから、はい」

もう一度、手を差し出す。

彼女の心をほぐすよう、にっこり微笑みながら。

その差し出された手の意味がイマイチ理解できないまま、彼女は今度は素直に手を差し出した。

「ん、ええ子や」

そう言って、彼女の手を両手で包み込み、まどかはそっと息を吹きかける。

「ちょ、なに…!!?」

美奈子は慌てて手を引っ込めた。

彼の息が触れた指先が熱い。

「なに、て…湿気持たすと、静電気起こりにくいねん」

彼の顔は至って真面目。

自分のやってのけたことの重大さを理解しているのだろうか?

美奈子は自分の頬が火照るのを感じながら、悔しさと気恥ずかしさとその他色々なものを渦巻かせて、まどかを睨みつけた。

まどかってさ、

ささやかな逆襲を試みる。

「成績はアレなのに、こういうことよく知ってるよねっっ!」

「ん、まぁな〜」

にこり、と笑顔で返された。

さてはて、彼への逆襲は効果があったのか否か…


100703


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