□ブルーレイニーブルー
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ほんま今日、学校サボったろか…

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珍しいことに、今日の彼は機嫌が悪かった。

甘い香水の香りを身にまとったいつものオトモダチが彼の周りで楽しげに談笑していても、彼だけは興味なさげに窓の外を眺めていた。

どんよりと暗い空からはしとしとと大きな雨滴が落ちてくる。

彼女らの話がひと段落したところで彼はつと立ち上がった。

「すまん、便所」

「またぁ?」

少女たちは怪訝な顔をする。

「夏は飲んだ分、出るんやからしゃあないやろ」

顔の筋肉をゆっくり持ち上げ、笑顔を作る。

笑うって、こんな力の要るもんやったやろか。

「もー姫条サイテー」

きゃはは、と甲高い笑い声を背中で聞きながら、彼はのろのろと教室を後にした。



「あ、姫条君!」

教室の窓越しに美奈子が彼の名前を呼ぶ。

会いたかったから、これは最高のタイミング。

それでいて、今日という日は最悪のタイミング。

「なんや自分、オレのこと待ち伏せしとったん?」

近頃、彼女に対して自分でもよく分からないもどかしい感情を抱いている彼は、軽口と共に無意識に微笑んだ。

さっきはあんなにも苦労して笑顔を作ったのに、今度はいとも簡単に。

違うよ、と笑う彼女に少しだけ胸が痛む。

(先に冗談言うたんは自分やろ、凹むなや)

最近、彼女の言葉に、仕草に、一喜一憂することが多くなった。

その理由に、彼はまだ気づいていない。

「今日も雨だね〜」

彼の肩越しに廊下の窓の外を眺めて彼女は眼を細めた。

どきり、と心臓が強く打つ。

「雨の日は髪がまとまらなくて嫌になっちゃうよ」

ぷくりと頬を膨らませてそうごちる彼女の言葉に冷や汗が出る。

頼む、気づかんでくれ。

「せっかくちゃんとまとまっても、外に出るとすぐダメになっちゃうよね」

今日くらい、自分のエスパー発揮せんでくれ、頼むから。

「あ」

まどかの祈りも空しく、彼女の視線がソレを捉える。

「姫条君もココ、はねてる」

一緒だね、なんて無邪気に笑う彼女。

「せ、せやねん」

ほんま雨の日は困るな…

そう言いながら、彼女が不自然に思わない程度に顔を背けた。

じわじわと頬が染まっていくのを感じながら。

逃げ出したい気持ちを必死に抑えつけながら。

「スマン、オレ購買行く途中やってん」

「あ、ごめんね」

ええよ、なんて気もそぞろに返事する。

(カッコ悪)

やっぱり今日は学校なんてサボるべきだったと大いに後悔しながら。

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乙女なのは、どっち?

100703


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