□24th Birthday
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「まどか、もうすぐ誕生日だね」

キラキラ輝く海を背景に、一歩前を歩いていた美奈子が振り返った。

「何か欲しいものある?」

眩しさに目を細め、オレは考えるフリをしながら唸ってみせる。

うーん、欲しいもんかー…なんて言いながら。

きっと美奈子からみたら、オレは自分の欲しいもんについてめっちゃ悩んでるように見えるんやろな。

ごめん。

ほんまは頭ん中なんて空っぽや。

目細めたんは夕陽のせいやない。

自分のせいや。

眩しいんは自分。

考えてるんは自分のことや。

ニコニコしながらオレの答えを待つ美奈子を見る。

別に飛び抜けてべっぴんさんな訳やない。

めっちゃスタイルええとか、そういうんとも違う。

でもオレにとっては世界で一番のお姫さんや。

時々、こいつなんでこんな可愛いんやろって無心で眺めてまう。

今みたいに。

こんなこと言ったら、笑われるやろか。

それとも、呆れる?

「なんか違うこと考えてるでしょ」

いつまでたっても答えないオレを美奈子が笑ながら睨む。

どうもバレバレやったらしい。

オレ的には上手くごまかしてるつもりやってんけど。

やっぱりエスパーちゃうんか、自分。

まさか考えてる内容までお見通しとかじゃないやんな?

もしそうやったら、死ねる。

今すぐそこの柵乗り越えて海の泡となったる。



ちゃんと考えてたで、なんて言いながら美奈子の頭を撫で回してみる。

ボロが出ん内にこの話はおしまいや。

「腹減らん?この近くにタコスの美味い店、出来たらしいんやけど」

くしゃくしゃになった頭を押さえてわーわー言ってる美奈子を笑いながらオレは先に歩き出した。


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