月は静かに

□白日の下、夢見るは
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かつ、と小気味よい音がそんな暗い思考を寸断した。

続けざまにまた二つ、木のはぜるような音がした。

風を切って目の前を何かがかすめる。

「なんや!!?」

一瞬、たたらを踏んだ青毛の馬の上でマドカが叫ぶ。

「全部お見通しだったってことだよ!」

振り返った先、既にカズマは後方に向けて矢の狙いを定めていた。

ふと、馬車の壁に刺さったものを見てぎょっとする。

(えらい物騒なもん打ち込んできたな)

さっきの音の正体。

普段、狩猟に使うものとは比べ物にならないほどに太い金属の矢が深々と矢頭を木の壁にめり込ませていた。

「王子サ…っと、ハヅキ、生きとるか?」

「あぁ…」

大して動じた風もない返答。

その合間にも矢は雨のように降ってくる。

帯刀していたジャンビーヤを振り回しながらそれらを払い落してなんとかしのぐ。

後方の敵に応戦するカズマを見て、周囲に散らばっていた兵たちも集まって来た。

敵方からもその数は見えているはずだが、攻撃が止む気配はない。

「お前、馬操れるか!!?」

馬車の方へじわりと寄って来たカズマは荒い息を吐きながら叫んだ。

お前、というのは勿論ケイのことだ。

「それなりに」

「なら馬車降りて馬に乗れ!」

なんでや、と思わずつっこむ。

「馬車の方が安全やろ?今降りるんは自殺行為や!」

「バカ!馬車なんかでたらたら走ってたらすぐ追いつかれちまうんだよ!」

そう言われてやっと事態の深刻さを知る。

生身を晒してでも逃げる必要性。

それほどまでに、状況は劣勢。


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