月は静かに
□I will be there for you
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「……て!」
「……さい。 ……、それは……」
「……でも、」
はっきりと声は聞こえない。
けれど、その空気から言い争っているらしいことは充分に感じ取れた。
「なんだ? 仲間割れか?」
壁際から、カズマと二人そっと顔を覗かせる。
「!」
(どういうことやねん)
淡い松明の光に浮かび上がったみっつの人影。
小さな影が背後の影を守るようにして、長い影に相対する。
長い影が手にしているのは――半月刀。
「おいおい、やばいんじゃねーの?」
「っ!」
自分達の腰の得物に手を掛けながら光のもとへと飛び出した。
「そこまでだ!」
「物騒なもん、下ろしぃや!」
首元に半月刀の切っ先を突き付けられた姿の彼女――ターリトの瞳がじわり、大きく見開かれる。
「な、んで……」
桜色の唇がわななくように震え、かすれた声を紡ぐ。
ケイの衣を掴む彼女の指先が真っ白になっている。
その彼女と同じ位驚いた顔でこちらを見ているケイとは対照的に、得物と視線を彼女に向けたままのレイイチは眉一つ動かさない。
まるで、彼らが来ることを予期していたかのように。
「ターリト、どきなさい」
まるで何事もなかったかのように彼女に向かって冷徹に言い放つ。
「予定調和だろう?」
まるで駄々をこねる子供のように、彼女は激しくかぶりを振った。
ケイの袖を握る手に更に力がこもる。
「……っ」
なぜだかそれに、マドカの胸が詰まった。