□離夏
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こらギリギリいけるやろ!なんて思ってた一学期の期末試験はギリギリアウトで、他人様よりもちょっとだけ一学期が長くなった。

それでも、補習なんて初日だけ出席して残りはサボる気満々だったし、別に痛くも痒くもない、なんて思ってたのに。

その唯一出席するつもりだった初日に、隣の席になった鈴鹿という名の直情型バスケ馬鹿と意気投合して、何となくそいつに会うために登校していたら無遅刻無欠席の皆勤賞となった。

今も大阪にいた頃も、同性の友達は少なくなかったが、ここまで積極的に絡む同級生が居なかったまどかにとって、鈴鹿の存在は少し特殊だった。

鈴鹿和馬という強烈なキャラクターのせいもあったのだけれど、毎日毎日飽きもせず、下らないことで笑い合いふざけ合った。

「なースズカ。補習も今日で終わりやし、この後ぱーっと打ち上げにでも行くか?」

何とはなしにまどかはそう声を掛けたが、即答で断られた。

明日の部活に備えて今日はさっさと帰宅し、早く寝るらしい。

「なんや自分、遠足前日の小学生みたいやな」

「うるせーよ。遠足よりよっぽど大事だっつーの!」

否定しないということは、小学生の遠足前日も似たような生活をしていたらしい。

「人がせっかく誘ったったのに」

「お前よりも大事なんだよ」

「静かにしなさい。ホームルームはまだ終わっていない」

補習期間が終了した解放感からか、いつになく騒がしい教室に氷室の声が響き渡る。

それを合図にしんと静まり返った教室で、ホームルームが再開された。

「ったくよー、なんで補習ん時までホームルームなんかすんだよ」

だったら早く帰らせろっての。

和馬が小声でそう言って眉間にしわを寄せる。

それにはまどかも同意して、教卓から見えないように机の中に隠した携帯を開いて時間を潰す。

定期試験をギリギリセーフでクリアした友人たちから何通かメールが届いていた。

(今日も着信はなし、と)

不在着信の通知がないことを確認してから、それぞれのメールへ簡単に返信する。

「それでは諸君、節度ある夏季休暇を送るように。以上」

最後の最後まで堅苦しい挨拶をして補習を終了した数学教師の、何か言いたげな視線から逃れて校門を出ると、待ちに待った夏休みがそこにあった。

蝉の鳴き声がわんわんと響く午後の陽ざしを浴びて、まどかはひとりニヤける。


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