□7歳の隠し子
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「ただいまー」

「おーおかえりー」

誰も居ないと思いながら、なんとなく帰宅を告げる挨拶をしたら、リビングから返事が帰ってきて驚いた。

「父ちゃん」

平日に家にいるなんて珍しい。

それを口にしていいのか少し躊躇う。

そんな俺の心ん中を読み取ったのか、父ちゃんは悪戯っぽく笑ってみせた。

「先方との約束が延期になってなぁ」

サボりや、サボり。

そう言った笑顔は、とても自分の父親とは思えない程に若かった。

「て、お前それ」

そう言って、俺が手にしていた雑誌を指す。

「あちゃー今月号もう出てたんか!」

オレとしたことが何ちゅー失態!

そう言って軽く凹んでみせる。

本当に、この人は若い。

見た目も、気持ちも。

なんて考えながら父ちゃんを見てたら、いつまでドアの前に立ってんねん、なんて言われた。

それもそうだとリビングに入ってソファーに身体を沈める。

そのまま、雑誌をぱらぱらとめくり始めた。

「そーいや、今月の特集はなんやったっけ?」

「ん?葉月珪特集!すっげー久しぶりだし、マジ楽しみ!」

そう言った俺に、てっきり似た者親子の父ちゃんも賛同すると思ってたのに。

「どーしたんだよ、その顔」

すっげー嫌そうな顔された。

「何?父ちゃん、葉月珪キライなの?」

「キライっちゅーか、なんちゅーか」

あいつまだモデルやっとったんか……

ぼそりと呟いた言葉を思わず聞き返す。

「何?」

「いや、もうてっきりモデルは廃業してシルバーの方を本職に……」

「キライな割に詳しくねぇ?」

「しゃーないやん!敵の情報はあるに越したことないんやから!」

「敵?」

いつから父ちゃんと葉月珪は敵対してたんだよ?

「敵や敵!」

オレの高校時代全部を費やして、母ちゃんを巡る熾烈なバトルを繰り広げとったって言っても過言やないからな!

そんなことを言いながら、うんざりした顔で紙面を眺める父ちゃんに目が釘付けになる。

「え?ていうことは……」

父ちゃんと葉月珪って同級生なの?

しかも交流があったってこと?

しかも母ちゃんを巡って……?

やっべぇ!

マジパネェ!

ていうか……







「父ちゃん一体いくつだよ!」

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さてさて。
特に名前を出さなかったのですが、登場人物が誰なのか分かって頂けましたでしょうか。

私の中ではどうも、彼らは親子という位置付けらしいです。笑

101029 結 



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