本棚
□アイスクリーム
1ページ/3ページ
ーアイスクリームー
6月の頭。
まだ梅雨にも入っていないというのに、やたらと暑い日が続く。
朝は寒くて、夜も寒くて、でも日中はとても暑い。
そんな初夏を感じさせる、とある日の夕方の出来事。
「ふぃー・・・あっつぃなぁ〜」
目線を上げれば、そこには赤い空を背景にまぶしい光を惜しげもなく降り注ぐ、大きな太陽がある。
暑いのは別に嫌いじゃない。
流れる汗も、火照る体も、仲間たちと共有するこの練習の時間も。
全部、とても楽しく思う。
好きだと断言できる。
俺は、この部活三昧の生活に満足している。
そんな思いから、汗を拭いつつ太陽を見上げたままニカッと笑みを浮かべると。
「・・・じま、田島?」
そんな声とともに、斜め後ろからタオルを巻いた坊主頭の人物がひょっこりと顔を出した。
「お、わりわり!ついボーっとしちまった!!」
心配そうなその声に、俺は当の人物ー花井を安心させるように満面の笑みを向ける。
そんな俺の様子に、安心したような、それでいてまだちょっと心配をしているような・・・そんな複雑な表情をする花井。
「大丈夫か?暑さにやられたか?」
「まっさか、俺はそんなにヤワじゃねぇよ!」
ほれ、と力瘤を作って元気さをアピールすれば、やっと納得したようだ。
ほっと息を吐き出し、笑顔を見せてくれる。
「そうだよな、お前は元気だけが取り得だからな。」
「ちょ、だけってなんだよー!」
苦笑交じりのその台詞にブーイングをすれば、よしよしと言いながら髪をくしゃくしゃと撫でてくれた。
その時の花井の表情がかっこよくて、俺はついむくれながらも赤くなる。
そして、何故かそれに釣られた花井も赤くなって・・・思わず二人して噴き出してしまった。
「ぶっ・・・」
「あはははは!!」
いきなり笑い出した俺たちに他の部員が不思議そうな顔をして見てきたけど、俺たちはそのまま笑い続けた。
そして、ひとしきり笑ったら、また練習に戻る。
「ほれ、イジワルトスあと5球!」
「はいよ、いつでも来いっ!!」
そして、いつも通りの日常が過ぎていく。
.