夢短編

□残された希望と共に
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ザンザスが、帰って来ない。ザンザスは暗殺部隊ヴァリアーのボスである。長期任務で帰って来ない事など日常茶飯事なのだが、今回に関しては予定日を大きく上回っている。
一週間で帰って来るはずだったのに、二週間した今も帰って来ない。
私はザンザスの帰りを自室で待っていた。ザンザスは帰って来て、執務室に戻る前に必ず私の部屋に来てくれる。
だが一向に帰る気配はない。それどころか何の連絡もない。
さっきもヴァリアーの幹部たちにザンザスの様子を聞いてみたところ、返って来た返事はみんな同じ、知らない、だった。


もしかしたらもうザンザスは…という考えが頭をよぎる。
部下も連れて行ってるが、ザンザスが死ぬほどの任務だと間違いなく全滅である。


私は半分諦めていたかもしれない。こんなに彼が遅れる事なんて無かった。

ザンザスが任務に行ってから一歩も部屋からでていない。もう諦めていたせいか、私は風呂に行く事にした。
私が部屋を出ようとドアノブに手を掛けようとしたその瞬間を見計らったように
プルプルプルプル...
電話が鳴った。こんな時に誰だろう、と携帯のディスプレイを見ると
「ざ、ザンザス!」
私は慌てて携帯を開けた。
そして電話に出た。
「ザ、ザンザス!」

電話からは、悲鳴、銃音、血の吹き出す音、怒鳴り声――つまり戦場の絶望の音が何かのドラマのBGMのように絶え間なく聞こえて来る。
私は戦場など行った事がないので少し身震いした。

「ザ、ザンザス!いるの?」
私は電話に向かって叫ぶ。
すると聞こえるか聞こえないかの声で


「もうすぐ帰る」
返事が返って来た。だが返って来たと同時に誰かの叫び声と共に電話が切れた。
私は慌てて電話をかけ直す。だが一向に繋がらない。
それでもザンザスが生きている、という事実―――希望だけはあった。
早く帰って来てほしい。そう思いながら私はお風呂に行くのをやめた。











それから二週間がたった
まだザンザスは帰って来ない

それでも私は希望と共に




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