佐助受

□ハッピーハロウィン!
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ハロウィンパーティー当日、前田利家とまつが経営している店に続々と人が集まった。長曾我部家の大黒柱元親とその嫁元就、その子供の鶴、そして急遽仕事の入った小十郎が抜けた片倉家である。元親手製の小悪魔の衣装を着た鶴を抱き上げて佐助が笑った。
「可愛いね、鶴ちゃん。良く似合ってるよ」
「ありがとうございます。とうさまの手作りです」
「あはは、お父さんお裁縫上手だもんねぇ。わ、悪魔の羽と尻尾まで付いてるんだ。凄いねぇ」
褒めると、まるで自分の事のように鶴が嬉しそうに笑った。胸に大きな赤いリボンの付いた赤と白のボーダーワンピースを着て、腰にはハートの付いたベルトを巻き、背中には悪魔の羽と尻尾が付いているのだ。そして頭にはリボンの付いた猫耳カチューシャ。赤と白のボーダーのハイソックスと黒い靴を履いた可愛い小悪魔だった。女の子を着飾りたかった佐助は近所の子供が可愛くて仕方がなかった。そうして鶴と遊んでいると吸血鬼の衣装を着た政宗と虎の衣装を来た幸村がやって来た。
「母上―――ッ!お館様とお揃いでござる!」
「良かったね、幸ちゃん。良く似合ってるよ」
「えへへへへ、本当でござるか?」
「回るな、幸村。尻尾が当たる」
尻尾を掴んで政宗が注意すると、幸村が慌てて尻を押さえて辺りをきょろきょろと見回した。どこにもぶつけていない事を確認し、ホッと安堵の息を吐く。
「あはは、細かい所まで良く出来てるよね。政ちゃんも良く似合ってるよ。カッコいい」
「ふん」
鶴と衣装の見せ合いをしている幸村を見ながら、佐助は政宗に小さく耳打ちした。
「政ちゃん、俺様は台所のお手伝いに行かないといけないから、幸ちゃんと鶴ちゃんを見ていてくれる?」
「あぁ、いいぜ」
「ありがと、政ちゃん!俺様嬉しい!チューしていい?」
聞き分けの良い年長の政宗の頭を撫でて抱き締めると、子竜が嫌がって暴れ出した。
「やめろ、気持ち悪い!いちいち抱き付くな!」
「何で甘えてくれないの?俺様哀しい!」
「ふざけんな!いいから放せよ!」
息を切らせて逃げて行く政宗に小さく苦笑を零し、佐助は台所へ向かった。そこにはジャックランタンのプリント入りのバルーンTシャツを着た利家と黒猫の衣装を着たまつがいた。まるでベビードールのようなセクシーなその衣装に、目のやり場に困ると佐助は引き攣った。頭には青いレースの付いた猫耳カチューシャ。首には鈴付きのベルト。そして、リボン付きの青のブラカップと裾部分に青いレースの付いた黒のビスチェ。尻尾付きのロングスカートにはスリットが入っていて、網タイツを履いたスラリとした脚がチラリと見えるのだ。ヒールの高い靴も相まって、大人の魅力たっぷりの黒猫だった。
「凄く意外だけど……それも親ちゃん作の衣装ですか?」
「いいえ、豊臣のお得意様がわざわざ注文して下さったのです。せっかくのハロウィンパーティーがいつもの和装では堅苦しいだろうと……」
にこやかに笑ってはいるが、佐助の目にはまつの顔に怒筋が見えた。送り主がパーティーに参加する手前、着ない訳にはいかない。嫌がらせかとまつが憤慨した。
「慶次が迎えに行っているのですけれど、どんな格好でお見えになるか今から楽しみですわ」
「あははは、そうですねぇ」
乾いた笑い声を上げながら、佐助は焼いてきたパンプキンパイを取り出した。すると、利家とまつが目を輝かせて喜んだ。
「おぉ、美味そうだな。片倉さんの作ったカボチャか?」
「えぇ、そうなんです。良ければ、まつさんのお料理の後に出してやって下さい」
「勿論だ。慶次が急に言いだしたパーティーで困っていた所だ。助かる」
「いえ、こちらこそ。子供達も凄く喜んでいて、誘って頂いて有り難うございます」
そうして利家とまつの手伝いをしていると、魔女の格好をした元就がやって来た。
「わ〜、就ちゃん可愛い。似合ってるよ」
「言うな」
緑のリボンを巻いた漆黒のとんがり帽子と裾をギザギザに切った長袖のワンピース。ウエスト部分を絞ってふんわり感を出したシンプルな魔女の定番衣装だった。元々端正な顔立ちをしている上に薄く化粧もしているのか、とても綺麗な魔女だった。
「親ちゃんにしては珍しくシンプルだね。マントはどうしたの?」
「調理場には邪魔だ。それより、交替だ。我がこんな分、貴様等の方に力を入れていたからな。どんな仕上がりになっているか……」
「ちょっとやめてよ。俺様だって台所に入るのに……」
「我に言うな。さっさと行け」
とんでもない衣装なんじゃ、と佐助は蒼くなりながら元親が待っている着替え室に向かった。
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