佐助受

□黒魔術で行ってみる?
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ある国のある村ではあるものが信じられている。そして、その日に向けてその村の人々がある物を求めてやってくると言う。


黒魔術で行ってみる?


どこでそんな情報を手に入れてくるのか、大学部の前田慶次が食堂へやって来て楽しそうに笑った。中学部・高等部・大学部の生徒が共同で使えるBASARA学園名物『みんなの食堂』である。
「黒魔術だってさ。信じる?」
「信じる訳ねェだろ、んなバカげた話」
一刀両断したのは右目を失った伊達政宗。高校二年のやんちゃ盛りである。
「へぇ、惚れ薬か。それが本当だったら試しに毛利に使ってみてェな」
楽しそうな笑みを浮かべて左目を隠す長曾我部元親。大学部に入って少しは落ち着いたようだが、政宗とつるんで良く遊ぶ元番長である。
「だろ?幸村も佐助に使ってみたら?」
慶次の言葉にキョトンと目を丸くする真田幸村。中学三年の真面目な熱血少年は受験に向けて政宗と慶次に勉強を教えてもらっている赤点ぶっちぎりの体育会系である。
「バレンタインは女子が男子にチョコを渡すものでござろう?」
「おやおや、日本のチョコレート会社の陰謀にまんまと嵌ってるよ。幸村ってオレオレ詐欺に引っ掛かっても気付かなそうだよね」
「違うのでござるか?」
甘味好きとして知られる若虎は佐助が作ってくれるチョコ菓子が楽しみでもあったのだ。説明を聴いていた元親が可笑しそうに笑った。
「あんたも猿飛の兄さんからチョコもらってんじゃねェか。良かったな」
「違うのだ。佐助は料理が上手い故、毎年沢山作って皆に配っているのでござる。その中の一つが本命らしいのだが……」
「あんたじゃねェってのかい?」
「恐らくは片倉殿かと……」
しゅんと頭を下げて幸村が言った。小十郎の名に政宗の顔がまともに引き攣る。
「バカ言え!小十郎は俺の作ったチョコケーキを食ってるぜ!」
「あはは、そりゃあ作ってくれたら食べるよね。右目さんにとっての本命がどれかは分からないけどさ……痛ぁ!何すんだよ!」
「うるせェ!おい、前田!その黒魔術ってのは本当か?今から行くぞ!」
「は……え?ええ?今から?そんなの行ける訳ないだろ?ってか、政宗は信じてなかったんじゃなかったっけ?」
慶次の指摘に政宗が低く笑った。
「それで小十郎が俺だけのものになればそれでいい」
「うわぁ……あんたのそう言うとこ、本当に面白いよ」
呆れられても一向に気にしない。その子供が面白いものを見付けた様な笑みを元親に向けると、面白そうだとすぐに乗った。西のアニキと呼ばれる元親と東のアニキと呼ばれる政宗は何かと気が合うのである。問題は真面目一辺倒の幸村だ。
「アンタも猿に使えよ。そしたらアイツはアンタだけのものになるぜ」
「そ、そんな卑怯な事……某は出来ぬ!仮にそんなもので片倉殿を縛り付けて政宗殿は満足されるのか?」
「当たり前じゃねェか!」
幸村の切り返しにも胸を張る政宗に、慶次と元親が堪え切れずに吹き出した。潔いのを通り越して人として問題だ。正論、人道を言っているのは幸村なのだが、一切悪びれない隻眼の男のその自信満々の態度の前に勢いをなくしてしまうのは仕方のない事なのかも知れない。
「小十郎とあんな事やこんな事が出来るなら俺は何だって出来る!アンタも猿とヤりてェだろ!」
「ば、ばばば……馬鹿な事を……!某は佐助の本当の心が欲しいのでござる!」
「Shut up!綺麗事言うな!猿の心は小十郎のもんだろ!俺だって……俺だってなぁ……ッ!小十郎――――ッ!」
「うわああああ、佐助―――――ッ!」
片想い中の彼らの絶叫は二人には届かない。そんな二人の傍で慶次と元親は腹を抱え、目に涙さえ溜めて笑い転げていた。



そうして結局男四人で学校を脱け出して、ある国のある村へ惚れ薬を求めて出掛けたのだった。
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