佐助受

□片倉家 de ホワイトデー
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片倉家 de ホワイトデー


佐助は朝から忙しい。
「おはよう、小十郎さん!政ちゃん、幸ちゃん!朝だよ、起きて〜!」
いつものように寝室と子供部屋を回る。寝起きのいい幸村が政宗を起こしてダイニングにやって来ると、佐助は笑顔で迎え入れた。
「おはよう!政ちゃん、幸ちゃん!」
「おはようでござる、母上!」
「……はよ」
元気いっぱいの母に釣られて幸村もウキウキとしだし、それを見る政宗のテンションは下がる一方だった。そうしていると小十郎が着替えてやって来る。
「おはよう、小十郎さん」
「あぁ、おはよう」
挨拶のキスをしている両親を尻目に政宗は幸村の世話をする。いつもの片倉家の朝の光景である。だが、そんな清々しい朝に、
「あ、そうそう。今日は織田さんが遊びに来るからね!」
佐助が爆弾を投下した。小十郎は言葉を失うほどに驚き、政宗はホットミルクを噴き出し、幸村はパンを喉に詰めて慌てて水で飲み下した。その驚きように驚いたのは佐助だ。
「どうしたの?」
「Hey.まさかとは思うが、織田って織田信長の事か?」
政宗の顔が子供のそれからかけ離れたものになり、佐助は目を見開いた。
「政ちゃん、織田さんと何かあったの?」
「……何もねェよ。接点がねェのに、何かある訳ねェだろ」
「そう?お医者さん嫌いだから、喧嘩でもしたのかと思っちゃった」
織田軍の面々は医療関係に進み、全国にネットワークを持ち、今や世界にも派遣される優秀な医者を抱えている最大手の医療機関だった。
(魔王が医者とはな。元々医者は嫌いだが、会ったら喧嘩どころじゃ済まねェだろうな)
何を呑気な、と政宗は内心で毒づいた。幸村は織田の単語に反応しただけで会話には入ってこない。子虎の中の若虎が驚いたのだろう。不思議そうな顔をしていた。
「それで、織田さんとはどういう話になっているんだ?」
小十郎が渋面になりながら尋ねた。
「バレンタインチョコを渡しに行った時に蘭丸君が凄く喜んでくれて、そのお礼にホワイトデーには濃さんがクッキーを焼いて持って来てくれる事になったんだよ」
「なら、来るのは奥方と子供だけか?」
「何言ってんの。信長さんも来るよ」
佐助が笑うと小十郎と政宗が難しい表情を浮かべて口を引き結んだ。すると、それまでの笑顔が一変して母の顔から一切の表情が消え失せた。
「何でそんな顔するの?信長さんがあんた達に何かしたの?何か迷惑を掛けられたの?」
「いや、そういう訳じゃねェ」
「じゃあ何で?いい人なんだよ」
(……人?)
小十郎と政宗は顔を見合わせた。佐助の口から絡まれていたところを助けてもらったのだと聞いただけで、二人とも実際に信長とは会っていなかったのだ。
「なぁに?何で黙るの?」
「いや、分かった。何か起きる前に出来るだけ早く帰る」
「…」
男の言葉に半眼になった佐助を尻目に、政宗はパンにバターを塗って頬張った。
「遅刻するぜ、小十郎」
「はっ」
「もう、話はまだ……」
「遅刻するだろ。幸村の世話をしてくれ。俺ももうそろそろヤバい」
政宗が話の腰を折ると、渋々といった風に佐助が動き出した。
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