瀬戸内

□コンビネーションアタック!
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コンビネーションアタック!


 戦場を駆け抜ける紅蓮の焔。武田の若虎の傍には漆黒の闇が付き従い、主人の傍に寄る者にはその翼が容赦なく襲い掛かった。戦場を見渡し、幸村が突出している敵に向かって駆け出した。その後方には一団が迫ってきている。攻撃を真正面から受け止め、
「うおおおおぉ!佐助ぇ!」
 雄叫びと共に、敵を空へ打ち上げた。
「はいよ!」
 力技にも長けた若虎に名を呼ばれ、佐助は駆けた。主人が何を狙っているのかを即座に理解したのだ。空を舞う敵に向かって走り、落下地点下で跳んだ。
「行くよ、旦那!」
 空中で上手く身体を捻り、攻撃態勢に入り、力を充分に溜めている幸村に向かって敵を蹴り落とす。そして、
「吹き飛べ――――ッ!」
 落ちてきた敵を強烈な力技で迫って来た一団諸共吹き飛ばした。一時的に周囲に静寂が訪れる。そんな若虎の隣に着地し、佐助が笑みを浮かべた。
「流石は旦那、お見事!」
「何の、お前の働きがあってこそだ!」
 互いに称賛しあい、パチンと手を叩き合った。


 それを見ていた政宗は勢い良く振り返り、
「小十郎!」
「無理です」
 右目の男に即答された。
 同じく元親は、
「毛利!」
「一人でやれ」
 智将に却下された。


 後日、政宗は元親を連れて慶次に相談していた。
「解ってねェな。俺と小十郎じゃ、叩き落としが逆なんだよ。小十郎が落としてきた敵を俺が吹き飛ばしたいんだよ」
「じゃあ、右目さんに蹴り落としてもらえばいいじゃん」
「俺に高く打ち上げる技がねェし、小十郎も撃ち落とし出来ねェ。どうせやるなら派手に決めなきゃ、意味がねェだろ」
「……もう諦めなよ」
 慶次の言葉に政宗が不満そうに口を曲げた。
「そもそもあんた達は空中戦が出来ないんだから、違う連携を考えればいいじゃんか。あれは佐助だから出来るんだよ」
 慶次は痛む頭を押さえながら元親に視線を投げた。
「元親もフィニッシュを決めたいとか思ってんの?」
「いや。打ち上げ技は毛利しかねェからな」
「じゃあそれを二人で考えればいいじゃん」
「紅い兄さんと忍の兄さんはそれぞれの役割に合った連携を組んでるから上手くいくんだ。力もそう変わらねェしな。俺と毛利じゃバランスが悪過ぎる」
 元親の言葉に慶次は首を傾げた。
「もしかして、もう試したの?」
「あぁ。腹ん中では毛利もやってみたかったんだろうよ。コンビネーション技、あいつが考えて来たんだぜ。俺との力の差が大き過ぎて上手くいかなかったけどよ」
「毛利さんって引き籠りかと思ってたけど、こういう時って凄い行動力を発揮するよね」
 そうして感心する慶次に思わず吹き出し、元親は不貞腐れている政宗に視線を投げた。
「あんたと右目の兄さんは基本の型が同じなんだろ?だったら、タイミングさえ合えばいけるだろ。ってか、あんた吹き飛ばし技持ってんのか?確か、突進技と、連続技の締めくらいしか吹き飛ばしが無かったんじゃねェか?」
「……ッ!」
 根本的に無理である。固まった政宗に慶次は苦笑し、元親は可笑しそうに笑った。
「だから右目の兄さんは無理だって言ったんだろ」
「きっと政宗が派手に決めたいって思ってる事も解ってたんじゃないの?」
 悶える隻眼の男を見やり、
「愛されてんじゃん」
「愛されてんじゃねェか」
 大きな男達は羨ましそうに言った。


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