瀬戸内

□Beautiful day
1ページ/2ページ

雲が流れる真っ青な空。
あの頃は空を見上げる余裕なんて無かった。
見ても、今みたいに綺麗だとも思わなかっただろう。
あの頃の方が断然空気も澄んでいただろうし、光化学スモッグなんてない時代なのに。
「…」
今、こうして空を見上げる人は今の時代にどれくらいいるんだろう。
生きる為に剣を振るったあの頃。今は生きる為に時間に追われる日々。結局、何も変わっていないのかも知れない。そんな考えに至った時、
「おい、慶次。何ボケっとしてる?置いてくぜ」
今は造船会社に勤める隻眼の男が振り返って呼んだ。
「あぁ、ごめん。すぐ行くよ」
前を見ると、元奥州の筆頭とその右目、甲斐の若虎とその配下の忍、そして詭計智将と呼ばれた面々が待っていた。
(あ…)
変わっている事に気付いた。
(あの頃は、皆こんな風に笑わなかった)
何物にも縛られない。そんな彼らの表情はとても幸せそうで。慶次の表情も知らず綻んだ。


あの頃の記憶を持つ彼らとの再会。
それは何物にも代えられない至福の時。


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ