瀬戸内

□BASARA de クリスマス
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街が赤と緑に彩られていくにつれて、隻眼の男が異様に張り切りだした。クリスマスに向けて準備を開始しているのだろう。そんな男を尻目に、元就は肺に溜まった息をゆっくりと吐き出した。人には向き不向きがある。元就はこういったイベント事が苦手なのだ。恐らく、何も用意出来ていなくても男は笑って済ますのだろう。それが解っているから、余計に気が滅入るのだ。
そして、悶々とした日々を送り、とうとうやって来たクリスマス当日。仕事を予定通り定時で片付け、帰宅途中の元気のない元就を見かねて、慶次がお節介を焼きにやって来た。
「やぁ、毛利さん。浮かない顔してどうしたの?」
「貴様には関係ない」
「そんな事言わずにさ、俺で良かったら力になるよ?」
「……失せよ」
心底嫌そうに顔を顰める元就の様子に、慶次は頭を掻いて苦笑した。ここまで取り付く島のない様子となると、どうやらかなり煮詰まっているようだ。元就に喜んでもらおうと上機嫌に張り切る元親を前に、何の策も思い付かないでいる彼はそれに中てられているのだろう。それならば、と慶次は作戦を変えた。
「毛利さんはどうしたらチカちゃんが驚くか知ってるんだろ?」
「……?」
喜ばせるのではなく、驚かせるのだ。元就が怪訝な顔で――と言っても、眉一つ動かさない無表情なのだが――振り向いた。表情は読み取れないが、彼が反応した事に慶次は手応えを感じた。これなら行けるだろうと、ニッコリと笑って口を開く。
「日頃やってない事をやってみるとか、どうせだったら、腰を抜かすくらいビックリさせてやればいいじゃん」
「……ふむ、そうか」
「あれ?早速何か思い付いた?」
「ふ、貴様もたまには役に立つではないか」
「あはは、有り難う。……けど、それって褒めてくれてんの?貶されてんの?」
頭を捻る慶次を尻目に、元就は進路を変えた。彼の頭の中では既にそれは楽しいクリスマスのイベントが出来上がっていたのだった。
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