瀬戸内

□BASARA de 七夕
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――星に願いを――

「なぁ、あんたの願い事は何だ?」
高松城へとやって来た元親は色とりどりの紙を城主の前に差し出しながら尋ねた。城主――毛利元就――は眉一つ動かさずに元親に鋭い一瞥を投げ、小さく溜め息を吐いた。
「昨日慶次がこの笹を持って来て思い出したんだ。一日遅刻しちまったが、大丈夫だろ」
「そんなものを持って乗り込んで来る貴様は阿呆か」
「いいじゃねぇか、たまには。願い事の一つや二つ、あんたもあるんだろ?」
「……」
元就が口を閉ざして、巻物に目を通す仕事を再開してしまい、元親はやれやれと頭を掻いた。元々心の内を素直に吐くような男ではなく、手の内は最後まで見せないのだ。ならば、と元親は紙にスラスラと願いを書いていった。
「大金持ちになりたい。もっと凄いカラクリ兵器が欲しい。海賊船の改造をしたい。子分共が安心して暮らせるようにしてやりたい。それから……毛利元就が欲しい」
「?」
笹に紙を吊るしていると、元就が手を止めて顔を上げた。表情を動かさない男の感情を読み取るのは難しい。そんな男に笑い掛け、元親は口を開いた。
「あんたが欲しいんだ」
「良かろう。四国はたった今より我が属国として……」
「違ぇよ!そういう意味じゃねぇ!!」
「そうか、残念だ」
やれやれといった風に溜め息を吐くと、元就が仕事を再開してしまった。言葉で勝てる相手ではないと、元親は元就の腕を掴み、手で顎を上げさせるとその瞳を見つめた。
「力尽くであんたを手に入れてやるよ。海賊の流儀はそんなもんだ」
「何を……」
漸く元就の表情が崩れ、鼻先が触れるくらいの至近距離で元親は不敵な笑みを浮かべた。
「属国か……そうだな、正々堂々と領地ごとあんたを奪いに来てやる。そしたら文句ねぇだろ?よし、そうと決まれば早速準備しねぇと!じゃあな、また来る!!」
「…………」
慌しく帰っていく元親の背中を見送り、元就は痛む頭を押さえながら、大きな息を吐き出したのだった。

数日後、予告通り元親が高松城へ攻めて来ると、元就は完膚なきまでに叩きのめしたとか、のめさなかったとか。



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