短編
□浮気じゃありません
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黙って出かけるのはいつもこと。
それにしてもこれは・・・。
「どうしたの?」
「んっ、いえ・・・」
映画館を出て、切っていた携帯電話の電源を入れると凄い量の着信とメールが届いた。
確認しなくても送り主は容易に想像できるけど一応確認してみる。
・・・やっぱり送り主は全部スクアーロ隊長。
3分〜5分置きに連絡が来ている。
急用だろうか?
どれもこれもメール文章は短く『早く出ろ』や『どこにいる』と内容は酷似していた。
「電話?待ってるからかけたら」
「うん、彼氏からで・・・」
「彼氏?えっ、君彼氏いるの?!」
「いる、んっ」
と言ってる間にかかってきた本日23回目の着信。
「はぃ」
『遅ぇ!!てめぇ何してやがったぁぁぁ』
本当に大きな声ですね隊長。
その声色好きですが鼓膜に響き過ぎです。
「映画見てました」
『勝手に出かけやがって、さっさと帰ってこい!』
「え〜」
『えーじゃねぇ』
「だって、今デート中なんです」
『はっ!?』
まったく悪びれた様子もなく真樹は言った。
「出かけてすぐにナンパされましてね、イケメン引っかけました。それで映画見てました。このあとは美味しいご飯食べて好きなもの買ってもらってから帰ります」
『てめぇ・・・』
「大丈夫です安心してください、寝たりしませんから」
『当たり前だぁぁぁ!!』
「当たり前なんですか?つまらない。隊員って女遊びしませんねぇ」
『お前が節操ねぇんだぁ!!』
「やだなぁ〜冗談です、いつも隊長を愛してます」
『感情がこもってねぇ』
「まぁまぁ、怒ると血圧上がりますから」
『怒らせてんのはてめぇの言動だろうがぁ』
「とにかく私は今忙しいので切りますね」
『な゛っ!っざけんな、お前はオレの』
「女なんでしょ。わかってますよ、そんな大きな声で恥ずかしいですから」
何を言われても平静な真樹に更に苛々が募るスクアーロ。
「そんなに私が好きなら迎えに来てください」
『なんでオレがっ』
「そしたらすぐ帰りま〜す、じゃ隊長」
切りやがった。
あいつはいつもこうだ。
ヴァリアーに入隊して来た当初から本気なのか遊びなのかわからない言動ばかりで、オレの女になってからも平気で男と遊びに行きやがる。
面倒臭ぇ。
と思いながらもいつも通り迎えに行くスクアーロ。
真樹も実は迎えに来てくれるのが嬉しくて、最終的には仲良く2人で帰ってくるのだが・・・この日は急遽スクアーロに仕事が舞い込んできた。
ボスからの命令には逆らわない。
スクアーロは真樹に連絡することなく急ぎ任務に向かった。
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