短編
□暑冷
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「あ゛〜つ゛〜い゛〜!!」
真樹はうなだれながら叫んだ。
「スクアーロ隊長〜なんとかして!」
「・・・黙っとけぇ」
「我慢できないぃぃ」
「・・・・・」
「死ぬ〜焼ける〜!!」
「うるせぇぞぉ!!」
「うるさいのは両方でしょ」
任務中であることをまったく気にしていない2人にルッスーリアは怒った。
「ほら見なさい、標的が逃げちゃったわ」
「ここが暑いのと、声が大きいスクアーロ隊長が悪い!ついでにその暑苦しいロン毛もなんとかしろ」
「んだとっ!」
「やめなさいってば」
「怒りんぼカス鮫隊長」
「てめぇ、いい度胸してんじゃねぇか!すぐに切り刻んでやる」
「ふ〜んだ、やられませんよぉ」
ルッスーリアの周りをグルグルと逃げる真樹。
「おやめなさいったらスクアーロ」
「なんでオレだぁ」
「いいから標的仕留めましょう」
「じゃぁ真樹が仕留めてきてあげます」
すばしっこく走っていく真樹をスクアーロは追いかけた。
「まったくしょうのない2人ね」
標的は直ぐに片付いた。
「弱ぇ」
「こっちも終わったわぁ。あら、真樹と一緒じゃなかったの?」
クネクネと腰をくねらせながらやってきたルッスーリア。
「てっきり一緒だと思ってたのに、どこかしら?」
「中に入ったんだろぉ、勝手なことしやがって」
「屋敷内はトラップがあるから危ないんでしょ、心配だわ」
「逃げ足だけは早いから平気だろぉ」
「そう?」
「・・・仕方ねぇ、いつまでも時間かけてらんねぇからなぁ」
平気そうな顔はしているが実はちょっと心配なスクアーロ。
生意気な部下だが失うには惜しい。
「お前はここにいろぉ」
スクアーロは屋敷の中へ窓を割って入っていった。
「・・・でてめぇは何してやがんだぁ」
捜しにきたスクアーロは巨大な水槽の中に嵌まっている真樹を見つけた。
「べっ別に」
「暑がってたからなぁ、ちょうどいいだろぉ」
大量の氷が浮いていて真樹の唇は紫色になっている。
「ちょうどいいですよぉ〜」
強がってみるがかなり身体の芯まで冷えていて感覚が鈍くなっていた。
「さっさと上がってこい」
「・・・・・」
「真樹?」
「もうちょっと・・ここにいる」
「はぁ?ふざけてねぇで・・真樹!?」
透明だった冷水があっという間に紅く染まり真樹の身体が沈んでいった。
「お゛い!!」
スクアーロは慌てて中へ入り引き揚げようとしたが何かに引っ掛かり揚げられない。
水中へ潜り真樹の足を見ると、尖った針が無数についている鎖に繋がれていた。
外すために動かすと更に食い込み出血が酷くなる。
スクアーロは剣で鎖を裁ち切った。
冷水から揚げた真樹の身体は冷えと出血で体温が低下しガタガタと音が聞こえるくらい震えていた。
「たくっ面倒ばかり起こしやがって」
「ス、スクッスクアーロ隊長、さぶいぃぃ!痛いぃぃ!」
「うっせぇ」
「なっなんとかしろカス隊ちょ」
「口は元気だなぁ」
抱きかかえてルッスーリアのところへ戻り、クーちゃんに怪我の治療をしてもらう。
「寒い〜寒い〜鮫隊長」
「うっせぇ!黙ってろ」
濡れた隊服は脱がせ、ルッスーリアの隊服を借りて着せる。
あいにく貸したかったスクアーロの隊服はびっしょりだ。
「だってぇ」
「オレもてめぇのせいでずぶ濡れだろうが!」
「・・・アホは風邪引かないから隊長は大丈夫でしょ」
「このガキぃ!」
「ちょっと〜静かにしなさいよ」
大怪我なのに結構元気な真樹に安心しつつ、応急処置を終えて騒がしいまま帰路についた。
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