短編

□甘い生活
1ページ/1ページ


私がヴァリアーへ来て半年。
今日も隊長は執務室へ来るなり酒まみれになった。
見慣れた光景にもう驚くことはないけど、隊長はよく我慢していると思う。

さすがに長期任務から帰ってきてすぐにこれでは可哀相だったかもしれない。
・・・やっぱりボスが機嫌悪いの教えてあげればよかった。







「隊長〜!」
「なんだぁ?」


執務室を出て行ったスクアーロを、食器を持ったまま追いかける真樹。


「お帰りなさい!それと・・大丈夫ですか?」


酒に混じった頭部から垂れる血を拭う。


「たいしたことねぇ。・・・その皿、ボスの食事だったのかぁ」
「あっはい。無言で暴れ始めたのでお腹が空いたのかと、サーロインを2皿程用意しました」


真樹は食事担当ではないがXANXUSはよく使命する。


「豪快に食べてくれました!もう焼き方が悪いと肉を投げられることもありません」
「そりゃあよかったなぁ」


隊員がXANXUSから理不尽な扱いを受けることは珍しくないが、真樹に対しては当初から扱いが酷くなかった。


「・・・隊長、どうされました?具合でも」
「別に」


雑務も真樹に言い付けるし、最近は執務室にいる時間が長くなっている。


「隊長もお腹空いてるんじゃないんですか?」
「いやっ」
「いいマグロがあるのでカルパッチョ作りますね!」
「・・・カルパッチョ」
「はい!美味しい〜の作ります。隊長はシャワー浴びて部屋で待っててください」
「お゛ぉ」


空腹ではないが作ってくれると言うなら断る理由はない。
スクアーロは自室へと戻って待つことにした。






 

15分後。


「お待たせしました〜」


ノックをして入室してきた真樹は可愛らしいエプロン姿で登場した。
隊服の上着は脱いでいるので上はシャツとエプロンだけ。
ボォ〜と見ていると、


「隊長どうしました?こっちに座って食べてくださいな」
「お゛っ、お゛ぅ」
「自信作です!」


自信満々に言うだけあって真樹は料理が上手い。
マグロのカルパッチョの他にも数品並べてあり、全部好物だった。


「いただくぜぇ」
「召し上がれ」


真樹は向かい側に座り、見る見るうちになくなっていく料理に満足顔だ。


「美味いぞぉ、お前料理はたいした腕だなぁ」
「ありがとうございます。でも料理はって・・・剣の腕もいいと思います」
「そっちはまだまだだ」
「えぇ!任務もちゃんとこなしてますよ」
「そぉかぁ?」


そう言いながらスクアーロは真樹の隣へ移動し、軽く唇に触れた。


「たっ隊長!!」
「なんだぁ」


首筋へと下りてくるスクアーロの唇。


「ちょっ、隊長」
「この礼をしてやんねぇとなぁ」
「礼って、そんな食事くらいで」
「オレのために作ったんだろぉ、わざわざマグロ仕入れて」
「!!知ってたんですか」
「当然だぁ。それに」
「あっダメ!」


器用に外されたシャツのボタンとブラのホック。


「やっ」
「これはなんだぁ」


左腕に包帯があった。


「これはあのっ、」
「オレが居ない間に任務に行ったらしいじゃねぇか」
「標的は仕留めました」
「勝手に怪我すんなぁ」
「すみません」


薄く血が滲む包帯が痛々しさを増す。

なるべくオレと同行させるようにしているが不在の間は目が届かねぇ。
オレの知らない所で怪我すんじゃねぇぞぉ、・・・心臓に悪ぃだろうが!


「隊長、もう手を・・・」


恥ずかしいので露わになっている胸を早く隠したいが手を抑えられている。


「2人の時は名前で呼べって言ってんだろぉ」
「でも隊長っあんっ!」


胸を這う舌が甘く身体を痺させる。


「たっ、いちょ」
「いつも強情な奴だなぁ。言いたくねぇなら言わせてやるぞぉ」
「えっ、いや、なら直ぐに言いますから」
「もう遅ぇ」


可愛い彼女の手料理を食べエネルギー満タンのスクアーロから逃れられるわけもなく、真樹は甘い快楽を一晩中貰った。














「起きてください隊長」


一晩中、腕の中で喘いでいた愛しい部下は既に朝食をテーブルに並べ笑顔でオレを起こしにきた。


「ん゛っあぁ」
「おはようございます隊長」
「・・・真樹」
「はい?・・・はいはい」


言われなくてもわかっている。
一緒に夜を過ごした朝はキスの挨拶。


「チュッ、起きてくださいねスクアーロさん」
「お゛ぉ」


いつもはかっこよくて頼りになる上司なのに、こういう時は可愛らしいと思う。
言うと怒るから言わないけど。


「食べましょう」
「そうだなぁ」


暗殺という血生臭い日常の中で、こんな甘い生活も悪くない。

.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ