短編

□剣技に惚れてる 3
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「やだぁスクアーロ、今夜はお泊りなんじゃなかったの?」
「んなこと言ってねぇ」
「真樹が彼女と朝までコースだから帰ってこないって」
「アホが。・・・その真樹はどこにいる」
「見たいテレビがあるからって部屋に戻ったけど」
「わかった」


その夜、てっきり外泊かと思っていたスクアーロが帰ってきた。
まぁ、女とどうしようと私には関係ないからいい。
けど、どうして私の部屋に来る?


「不法侵入。それとここは幹部の部屋じゃないぞ」
「う゛お゛ぉい、土産だ」
「えっ?」


小さな容器に入っていたのはドライアイス。
その奥に昼間食べたアイスが数種入っていた。


「今日付き合ったお礼かな?」
「美味いって言ってたからなぁ」
「そう。くれるって言うなら貰っておくけど・・・なんで座ってんの?」


直ぐ隣に腰かけてきた。
そして私が貰ったばかりのアイスを食べ始めるスクアーロ。
私への土産だろそれ。

訳がわからない。
なんでのん気に食べてるのかが。

あれっ、もしかして抱けなかったとか?それでいつものうるさい元気がない?
もしかして相手が純情過ぎて抱けないとか?
どんだけヘタレだよ。


「あっ!それ食べてない味、私にもちょーだい」
「ん゛、あ゛ぁそうかぁ」


半分残しておけという意味だったのに・・・。
スクアーロの唇が私の口を塞ぎ、口内には甘いチョコレートの味が広がっていく。

すぐに終わるかと思ったら、このキスはしばらく続いた。


「自分で食べられるから」
「欲しそうな顔してたぜぇ」
「アイスをね」


なんで急に上機嫌になってんの?


「それとさ、私じゃなくてラヴィアに好きなだけキスすればいいでしょ」
「いいじゃねぇか」
「二股とか嫌いだし。あの女、浮気とか大騒ぎして泣きそうだから面倒」
「・・・別れた」
「別れた?へぇ、別れたんだ」
「もっと、こうなんかねぇのかぁ」


リアクションを求めるなよ。
どうでもいいよスクアーロの恋愛なんて。


「ヘタレは嫌!不能は嫌!ってフラれたんだ。可哀相なスクアーロ」
「う゛お゛ぉい、オレはヘタレじゃねぇし不能でもねぇ」
「そう?」
「それでなぁ真樹」
「ん〜?」


テレビドラマが今いいところだ。
メガネをかけた少年が犯行を説明して、もうすぐ犯人を告げる。


「オレと付き合わねぇかぁ」
「・・・・・はっ?」
「オレと付き合え」


なんだその台詞?
ラヴィアと別れて、直後に私。
あぁ、ボケてほしいのかな?


「どこに?」
「どこにじゃねぇ」
「じゃぁ〜、修行?」
「う゛お゛ぉい、ふざけてんのかぁ」


ふざけた方が面白いかと思ってやってあげたのに。


「付き合うのはオレとお前に決まってんだろうが!」
「嫌だ」
「う゛お゛ぉい、もう少し考えろぉぉ!!」
「う〜〜〜む・・・。嫌だ」


数秒考えてみた。
スクアーロと付き合うとか考えたこともない。
剣士としてのスクアーロはいいと思うけど、それだけ。


「話はそれだけ?じゃ、ドラマに集中したいから帰って」
「おまっ、こっち向けぇ」
「邪魔すんな」
「邪魔じゃねぇ!」


いや、明らかに邪魔だよ。
その無駄にでっかい声でテレビの声が聞こえてこない。
犯人を見逃したらどうしてくれんだ。


「オレの話を聞けぇ」
「テレビ終わってからにしてよ」
「んなのあとにしろぉ」
「邪魔するなら速攻叩き出す」


私が愛用している銃を殺気と共に向けた。


「ボスに願い出て、他の幹部の部下に異動するぞ」


本当に異動する気はないけど。


「・・・終わったらちゃんと聞くんだろうなぁ」
「わかったわかった」


それからスクアーロは静かだった。
『待て』をしている犬みたいだと思ったことは言わないでおこう。


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