LL自警団

□ストーカー事件
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ここは長生高校。
毎日多くの学生が学び、汗を流す極普通の学校である。


そして今日も放課後四階一番奥の部屋の
治安保全部、通称LL(Long Life)自警団は大忙し......


(シュウジ)「ああー、暇だ」
(エミ)「ちょっと!シュウジ、それお客さま用のお菓子でしょなに食べてんのよ」
(シュウジ)「良いじゃんかよ、どうせ来ねーよ。一番最近の依頼が並木先生の家の鍵探しだろ。しかも1週間前の」


それほど忙しくもない


(シュウジ)「それにしてもあれだな...学校平和だな」
(エミ)「まぁ、良いことじゃない」
(シュウジ)「それじゃ駄目なんだよ。もっとこう俺の正義感が沸き立つような事件が欲しいんだよ!」
(エミ)「はいはい、じゃあ神様にでも願ってれば?」
(シュウジ)「神様、仏様どうか俺にドラマのような、血肉湧き踊るような依頼をください!」


しかし何もおこらない

...かと思いきや、その時扉が突然開いた。


(女子高生A)「あのぉー、ここってLL自警団ですよね?」
(シュウジ)「キタァァー!」
(女子高生A)「えっ!?」
(エミ)「馬鹿。恐がってるじゃない」
「ごめんね、この馬鹿は放っておいて構わないから。何か困ったことでも?」
(シュウジ)「あっ!そういえば、まだ名前聞いてないや。どちらさんで?」
(女子高生A)「えっと、2年B組の小高友里恵です。」
(エミ)「それで何かあったの?」
(ユリエ)「実は...誰か分からないんだけど、ずっと人に後をつけられているの。以前は登下校の時によくいる程度だったんだけど、この頃は私がお店に入った時も必ず後から入ってくるし...思いきって顔を確認しようとしても、怖くてはっきりと見ることはできないの」
(エミ)「たちの悪いストーカーね。まかせて!私たちがそいつを絶対捕まえてあげりから」
(シュウジ)「それにしても小高さんは、そいつが誰だか本当に分からないのか?」
(ユリエ)「うん...」


友里恵は言葉を濁した。


(シュウジ)「小高さん。俺たちは真剣にストーカーのことを解決しようと思ってる。それには少しでも情報が必要だ。そして俺たちを頼ってきたのはあんただ。何か分かってることがあるんなら、話してくれるのが筋ってもんじゃないのか!?」
(エミ)「シュウジ、友里恵ちゃんだって困ってるのよ!」


(ユリエ)「いや...シュウジさんの言うとうりだわ。実は怪しい人はいるの。同じクラスの吉野雅也くんなんだけど」
(シュウジ)「どうしてそいつだと?」
(ユリエ)「学校でも挙動が怪しいし、雰囲気がストーカーの人と似ている気がするの」
(シュウジ)「ふーん。じゃあ小高さん、今日はとりあえず1人で帰ってくれ。ただし、俺たちがその様子を離れた所から監視する」


(ユリエ)「...はい」


シュウジ達は入念な打ち合せをし、学校を出た。


友里恵はにぎやかな商店街を歩く。その少し後ろに1人の高校生が続く。Yシャツをズボンから出し、髪をたたせ前髪にメッシュをいれている。見るからに不良だ。


吉野雅也だ。


(エミ)「アイツがストーカーよ!もう確定、雰囲気がそのものだし、懲らしめてきてやるわ」
(シュウジ)「バッカ!やめろって、全然証拠になってないだろ。たまたま歩いてるだけかも知れないし、捕まえるならもっと決定的な事があってからだ」
(エミ)「そんなこと分かってるわよ。冗談よ冗談」
(シュウジ)「お前の場合冗談に聞こえないな...」


2人がそうこうしてるうちに、友里恵は『アクセサリー☆デスピサロ』という店に入った。友里恵には少々不釣り合いな店だ。


(エミ)「それにしても友里恵ちゃん、すごい店にはいるのね...」
(シュウジ)「.........」

シュウジは何か考えごとをしているようだ。


そして雅也もアクセサリー☆デスピサロに入っていった。


(エミ)「はい、確定。二度とこんな事出来ないようにしてやるわ」
(シュウジ)「....よし、エミ。雅也に接触するぞ。ただし、まだ手は出すな」
(エミ)「えー、何で?」
(シュウジ)「分かったか?」
(エミ)「了解」


数分後、店の中から友里恵が出てきた。しかし雅也はなかなか出てこなかった。


(シュウジ)「(妙だな、これ以上離れると見失う距離だぞ?)」


雅也が出てきた。
シュウジとエミは雅也に近寄ると


(シュウジ)「吉野雅也だよな、ちょっといいか?」
(マサヤ)「誰だおまえら?」


シュウジとエミは、待ってましたとばかりにポーズを決めて言い放った。

(シュウジ・エミ)「LL自警団だ!」

(マサヤ)「あぁ、噂の。それで、そのLL自警団様が俺に何の用だよ?」
(エミ)「とぼけないでよね、あんた、友里恵ちゃんをこの頃つけまわってるらしいわね?彼女が私たちに相談してきたのよ」
(マサヤ)「......はぁ!?」
(エミ)「高校生にもなって恥ずかしくないの?」
(マサヤ)「ちょっと待てよ、全然理解できねーよ!俺が友里恵をストーカー!?そんなことするわけねぇし」
(エミ)「何言ってんのよ!現に今だって後をつけてたじゃない。しかも友里恵ちゃんが入った店にもあんたは入ったじゃない」
(マサヤ)「言い掛かりだぜまったく。学校出た時にたまたまあいつが前にいただけだし、デスピサロだって今日の帰りに行こうと思ってたんだよ!」
(エミ)「見え透いた嘘を」
(シュウジ)「実際に小高さんは困ってんだ。これ以上やると警察ざただぜ」
(マサヤ)「だから違うって言ってるだろ!...もうこんな時間か。俺は色々と忙しいんだよ。じゃあな」


雅也は走り去っていった。



翌日

シュウジとエミは昨日のことを友里恵に話していた。
部室には昨日いなかったヨシノリとアカネもいた。


(ユリエ)「....ひどい。まるで私が悪いみたいじゃない。私の迷惑なんて考えてないんだわ...」
(エミ)「まぁ昨日釘刺しておいたから、もうストーカー行為は無くなると思うよ。あんな奴のことなんか忘れようよ」
(ユリエ)「...うん。そうだね、そうするわ。色々とありがとう」
(シュウジ)「良いって事よ。何かあったらいつでも頼ってくれよ」


友里恵は軽く会釈して部室を出ていった。


(アカネ)「なんや、今回は2人で解決かい。うちも追跡したかったなぁ」
(ヨシノリ)「そうそう、何か拍子抜けだよね。困った女の子を救うのは僕の仕事だっていうのに」
(エミ)「残念だったわね。ストーカーなんて私1人でも楽勝よ!」


エミは誇らしげだ。
しかし、それをシュウジが制した。


(シュウジ)「いや、そうでもねえぞ。多分今日も雅也のストーキングは続くだろうな」
(エミ)「なんで!?昨日あれだけ言ったじゃない。あいつ本当に警察呼ばれたいわけ?」
(ヨシノリ)「シュウジ、どういう事なんだい?」


シュウジは部室の真ん中に3人を集めて、説明し始めた。


(エミ)「そんな...何でそんなことを」
(アカネ)「人間は怖いのぉ」
(ヨシノリ)「でも、それはまだ推測に過ぎないんだろ?」

(シュウジ)「ああ、そうだ。だからヨシノリ、アカネ、お前達にはこれから情報を集めてもらう。この推理の根拠となるようなやつをだ。いいか?」
(ヨシノリ・アカネ)「了解」


アカネはパソコンを開くと早速仕事に取りかかった。ヨシノリは外に聞き込みに行ったようだ。




友里恵は今日も商店街を歩く。昨日より少し人が減っているせいか、アーケードの中で響くローファーの足音が耳につく。


「コツ、コツ、コツ」

「コツコツ、コツコツ」


足音は2人.....


友里恵は足音に気付くと、後ろをチラッと見た。


足音の正体は紛れもない....雅也だった。


友里恵は小走りに、雅也から逃げるように家へと急いだ。




翌日

(エミ)「えっ!?またストーカー?」
(ユリエ)「うん...もう大丈夫って言ってたから、安心して帰ってたんだけど、いたのよ」
(シュウジ)「...雅也か?」
(ユリエ)「ええ、そう。お願いLL自警団。あいつを捕まえて警察に通報しましょう。それで学校の皆の前であいつがストーカーだと宣言してやるの」

(ヨシノリ)「ちょっ、ちょっと落ち着きなよ友里恵ちゃん、いくらストーカーといってもクラスメートだよ。なにもそこまでする必要は無いんじゃないかな?」
(アカネ)「そうや、いきなりどうしたっていうねん?友里恵ちゃんらしくないで」

(ユリエ)「いや、駄目なの!あーゆう人は一度懲らしめてやらないと、また同じことを繰り返すわ。私みたいな弱い人がこれ以上犠牲になるのは嫌なの。ここで私が勇気を出さないといけないの!」
(エミ)「......」

(シュウジ)「そうだな、そうゆう奴だよ雅也は。でもな小高さん、俺たちはLL自警団だ。確かに悪い奴は懲らしめるし、改心させる。でも!そこまでだ。あんたの言うようなことをしちまったら、あいつはその先もずっと非難の目で見られることになる。俺たちにそこまでする権利なんて無いし、そんなことしたってあんたも虚しいだけだぜ」

(ユリエ)「何よ、皆して。私がどんな思いで言ってるか分からないのね。被害者の気持ちなんて分からないのよ!」


友里恵は、勢いよくドアを開けると。走っていってしまった。


(ヨシノリ)「これで、良かったんだよね?」
(シュウジ)「ああ。それじゃあこの事件を片付けに行きますか」




4人は揃って部室を出た。




校門の近くには友里恵の姿があった。キョロキョロと辺りを見回し、何やら思い詰めた表情をしている。


それから30分程、友里恵は校門近くを離れない。


(ユリエ)「遅いわね...」


すると友里恵に向かって歩いてくる人影があった。シュウジだ。


(シュウジ)「よう、小高さん」
(ユリエ)「何の用ですか?」
(シュウジ)「さっきからずっとここにいるけど、誰を待ってるんだ?」
(ユリエ)「別に誰でも良いじゃない」
(シュウジ)「俺達には言えないような奴なのか」
(ユリエ)「ただの友達よ。帰りに一緒に買い物に行く約束をしてるの。何か問題でもあるかしら?」
(シュウジ)「別に問題は無いけどもし小高さんが嘘をついていてある人物を待っているとしたら、そいつはここには来ないぜ」
(ユリエ)「何がいいたいの?」

シュウジは大きくいきをすって言った。

(シュウジ)「今回のストーカーに関する問題は小高さん、あんたの自作自演なんだろ?」
(ユリエ)「.....!?」

(シュウジ)「ここ数日、あんたがやたらクラスの男子と話していると聞いたからな、気になって色々と聞き込んでみたんだよ。そしたらあんたがその日の予定とかをよく聞いてくるってことらしいからな」

友里恵は黙っている。


シュウジは続ける。

(シュウジ)「あんたが入るにはデスピサロは少々不釣り合いだったな。それが無ければ俺が疑問を抱くこともなかった」

(ユリエ)「でも...動機が無いじゃない!」

(シュウジ)「それは、あんたが雅也にふられたからだろ?」
(ユリエ)「...!?なんでそのことを、まさか雅也が...」
(エミ)「いいえ、あなたの友達が教えてくれたのよ」


シュウジの背後からエミが現れた。ヨシノリとアカネ、さらには雅也も一緒に。
心なしかエミの表情にはやるせなさ見て取れる。


(ユリエ)「エミさん....」

(エミ)「なんでこんなことしちゃったのよ。確かにつらいと思うけど、そんなことしたって何にもならないわ」
(ヨシノリ)「友里恵ちゃんぐらい可愛かったら、新しい恋なんていくらでもできるさ」
(マサヤ)「お前まだあの事を根に持ってたのかよ」

雅也は少し困り顔だ。

(ユリエ)「当たり前じゃない!だってあなたは私に、今は女とか考えられないって言っておきながら、私をふった次の日にもう違う女と付き合ってた。もっとも、その女ともすぐに別れたらしいけど」


(シュウジ)「......」
(エミ)「......」
(ヨシノリ)「......」


3人の視線が雅也に突き刺さる。


(マサヤ)「なんだよお前らその目は、俺は被害者だぜ」

(エミ)「なんかあんた救えないわね」
(ヨシノリ)「クズだね」
(シュウジ)「まぁまぁエミにヨシノリ、雅也がどうしようもない程のクズで救えない豚野郎ってことは薄々分かってただろう」


(マサヤ)「なんか泣きたくなってきたぜ」


友里恵は不敵に笑った

(ユリエ)「ほら、皆も雅也が救えない奴だって分かってるんじゃない。やっぱりこの男には罰が必要なんだわ」


パチンッ


友里恵は突然指を鳴らした。

すると校門の裏や垣根、昇降口からぞろぞろといかつい顔をした長高生が出てきた。
5人はあっという間に取り囲まれてしまった。
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