《special chocolate》 蘇芳

□蘇芳
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真っ赤なキャップから覗く白い顔、それと粉塗れのエプロンにコックコート。


気が乗らないイタリアンレストランでの合コンは、俺に少しだけ幸せを与えてくれた。


カウンターの前に設けられているピザコーナーに、働くあの子を見つけたから。


「でさ、患者さんが手とか握って来てー」
「キモーイ! 」
「メグちゃんなら、俺が手ぇ握りたいよー」


同じ病院で働く研修医と看護婦の合コン、相手は俺達を何とかモノにしようと必死だけれどこちらはただ単にヒマ潰しとその場限りの関係を求めるのみ。


宙を舞う生地は、彼女のキャップにまた粉を落とす。


こんな所で働いているのだから、将来はお店を出したいんだろうな。


「おい、哲! 聞いてんのか? 」
「え、何? 」
「やる気ねーなー、お前は。だからオーベン(指導医)にも怒られるんだよ」


俺は今『慈聖医科大学付属病院』で研修医をしている、それも外科で。


当然実家も開業医なので生活及び女の子には不自由していないし、今まで何にも困った事は無い。


でも俺が付いているオーベンは厳しく、毎日の様に怒られてばかりでそれが唯一のストレス。
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