ケイアキ小説

□バカ犬。
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「あ、明良ぁぁ〜」
「…何だよ…」
明良は眉間にシワを寄せ、読書を中断させた。
けいすけは今にも泣きそうな情けない声を上げ、明良に助けを求めるが相手にされていない。
またどうでもいい事なんじゃないかと耳だけ傾けまた本に目をうつす。
けいすけの事より本の続きが気になるようだ。
「明良…もっと俺に興味持ってよ…」
「…」
机から目だけを出しチラリと様子を伺う。
まるで飼い主の機嫌を伺う子犬のようだ。
けいすけに興味を持っていないわけじゃないけど「明良ぁ」と声を上げるときは大抵ため息をつく内容が多いのも原因だ。
「じゃぁ、何だよ。早く言え」
と促すが
「…。もういいよ…」
けいすけは適当にあしらわれている事に傷ついていた。
「何でそうなるんだ、お前は」
はぁ。と明良が深いため息をこぼすごとに傷が深まる。
大好きな明良に呆れられ、怒られたりでけいすけの思考は悲しみで溢れ返っていた。
「…明良。明良。俺…」
目の前が痺れを切らしたような感覚に陥り意識が途切れかけていた。
(…あれ…視界が…)
「あ…きら…」
ドサ!!
「…け、けいすけ!!おい、けいすけ!!」
床に倒れこんだけいすけを抱き起こし何度も呼びかけるが何の反応もない。
荒い息遣い、熱る顔に気付き額に手を当ててみると物凄く熱い。
かなり熱におかされてる。
何でこんなになるまで放っておいたのか問いただしたいが本人は倒れてるし怒りのやり場がない。
「…このバカ犬がぁ…」
ちっと舌打ちをした後に自分より大きいけいすけを背中に担いだ。
(意識のない人間ってこんなに重いのか…)
耳にかかるけいすけの熱い吐息。
こんな時にまで「明良」と呼ぶ弱弱しいけいすけの声。
こんな事態にならないとけいすけの大切さに気づけない自分にも腹が立ちまた舌打ちをした。
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