銀色はいすくーる

□6時間目
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『いよいよ始まっちゃったよ…
 うぅ、緊張するなぁ』

「そんなに深く悩むことないわよ。
 ほら見て」



お妙ちゃんの指す方を見てみると、そこには既に面倒なんだろうか。

ぐったりと体育座りのままうつ伏せ状態になっている生徒が多数。

いや、ほぼ全員といったところか。



「どうせ真面目に聞く人なんていないわよ」

『そ、そうかなぁ…?』

「その通りネ」

『それならいいんだけどな…』



チラリ、とステージの方を眺める。

演説会を仕切る長がステージの上で話をしている中、新八君は顔を真っ赤にさせて凄く緊張している顔だ。

思わずクスリ、と笑みがこぼれる。



『新八君、すごく緊張しているよね』

「そうね。
 でも私たちのおかげで新ちゃんもいい経験をすることになるんだからいいじゃない」

「そうアルな!」

『そうだ…ね?
 (あれ、いいのかな?)』

《では、これより演説を始めます。
 まずは1年生からです。
 1年A組の佐藤さん、お願いします》

「はいっ!」



元気良い返事をした佐藤さん。

ありきたりな名字だなぁ、と思いながら話を聞く。



「僕が生徒会に入ったら、皆誰にでも挨拶が出来るような学校にしたいです」

「うわ、ありきたりすぎるネ。
 名字だけでなく、内容もありきたりアルか」

「でも、あの子もあの子で必死に考えたんだと思うわ。
 見て頂戴、あの表情。
 凄く自信作だぜ、みたいな表情だわ」

『凄い!そんなの分かるんだ、お妙ちゃんは』

「フフ、まァそんな所かしらね?」

「き、清き一票をお願い致します!」



ペコリ、とお辞儀をしてさっさと席に着く。

余程緊張していたのだろう。



《では、続きまして1年Z組より!
 近藤さん、お願いします》

「はい!」

「うわ、野太い声ね。
 吐き気がするわ」

『お妙ちゃん、それ言い過ぎだよ!
 近藤君だってきっと頑張って考えてきてるって!
 ホラ、目の下に隈があるもん』

「あら、本当だわ。
 道理でいつも以上にキモ『お、落ち着いてぇぇぇ!』

「大丈夫よ、私はいつでも冷静だから」

『(め…目が虚ろになってる?!)』

「近藤勲です!よろしくお願いします!」



マイクなしでも体育館中に広がる声。

風紀委員の先輩だろうか、近藤を見てヒソヒソを話している。

近藤は目の前のマイクを自分の顔を合わせて、持っていたクシャクシャの紙を取り出す。



「司会さん!始めてもいいですか!」

《あ、別にどうぞ。
 つかさっさとやれ》

「はい!」



司会の冷たい視線にも負けず、前向きに原稿を読み始めた。



「俺がもし、生徒会の役員に入ったら…
 朝の時間にポエムを作って読む時間を設けたいと思っています!」



ドサッ!とどこからか音がする。

恐らく、土方や山崎などの音だろう。



「そして、俺が詠むポエムはお妙さんにささげ」



る愛の詩!と読む前に、妙が立ち上がりダッとステージに向かって足蹴りを決めた。

そして―――勿論のように、



グハァッ!

「そんな時間、誰も求めてなんかいないわよ。
 さっさと出ていきなさい、半ゴリラが」

「わ、分かってます…
 愛情の、裏返…

「「「近藤さァァァん!」」」

《はい、そこの3人は近藤さんを保健室へ。
 それとそこの君、可愛いけどステージに乱入はいけないから》

「あら、御免なさい」



“可愛い”という言葉につられて、朗らかに笑う妙。

素直に先程まで座っていた場所に、座り込んだ。


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