*死神story*

□想い、想われ
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市丸とイヅルが再開したと言う設定の捏造話






周りには誰も居ない。ただ風の吹く音だけが聞こえる。


「…市丸隊長」

「もう隊長やないよ、イヅル」


そう言った市丸の表情は切なげなように見え、イヅルはギュッと心臓が締め付けられた。



「…そうですね。


…でも、僕の中では3番隊の隊長は…、市丸隊長しかいませんから」

「…そらァ、おおきに」


以前なら嬉しい事言ってくれるなぁなどと、市丸はニッコリと微笑んでくれる。たが、今はお互いに距離を取りその距離感、会話、雰囲気が、前のような関係には戻れない様子を物語っていた。市丸はもう行くわ。と白い服を翻し、片腕を上げヒラヒラ手を振りイヅルに背を向け歩き出した。去っていく後ろ姿をイヅルはただただ眺めていた。ふいに、昔の出来事が思い出された。



(イヅル〜茶淹れて)
(またですか?仕事して下さいよ)
(いいやないか。優秀な部下が居てボクは幸せやわ)
(…僕も上司が隊長で幸せです)






「た、隊長っ!!」


例え市丸が聞いていなくともいい…その一心でイヅルは市丸に向かって叫び続けた。


「っ、何で僕を連れてって下さらなかったのですか!何故、何で…!隊長の為なら僕は、命を捧げる覚悟だってあった…!周りから隊長は反逆者と言われても、僕は隊長を…!「イヅルっ!…それ以上言うたらアカンよ」


言葉を遮ると同時に市丸はイヅルの目の前に移動し、グッとイヅルの腰を抱き寄せ、感情が一気に溢れ出し涙でぐしゃぐしゃなイヅルの顔を、両手で優しく涙を拭き取るように撫でた。



「またなイヅル」


軽いリップ音を立て、市丸はイヅルのおでこにキスをした。そしてイヅルの前から姿を消した。

残されたイヅルは、おでこにまだ微かに残っている感触を手で触り、空を見上げた。



「…ズルい人だ」



見上げた空は嫌みなほどに雲一つなかった。




想い、想われ









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