偽装世界
□えにっき
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「おいテメェ…これは何だ?」
黒い革製の表紙の分厚い本を片手に、不機嫌を露わに眉を寄せる俺の相棒兼、愛眼動物兼、恋人。
その本は、確かに見覚えがあった。
「ッ…貴様!!あれほど私の日記を読むなと…!!」
それを取り返そうと腕を伸ばす。が、あろうことかその手は虚しくも空(くう)を掴んで終わった。
「つーかテメェ、これは何だ!!『○月×日、僕のガユスと図々しくも戯れる雌猫のジヴーニャめ。あまりにも腹立たしいためガユスの服に盗聴機を仕掛けてやった。聞き耳を立て、さぁ始めるぞ、というときに都合よく仕事が入っていたため、それを理由に電話をかけてやったらあの女、キーキー怒ってやがる…ざまあみろ…ガユスは僕のモノだ』…ってオイ、コレ!!あんときの電話は計画的犯行なのか!?つーか俺がいつ貴様の所有物になったァ!!」
きゃんきゃんと怒鳴るガユスは、俺が高い買い物をしたときにも似ている。その顔が可愛くて、わざと赤字を出しているなんて言ったら、間違いなくあの世行きであろう。
ガユスによって天に送られるのならば、満足ではあるが。
…否、少しでも長く奴の隣にいるために、それは避けたい。