灰華蒼月珠

□クリスマスローズを飾り-4-
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 科学班の朝は騒がしい。誰かが常に右へ左へバタバタと走りまわり、リーバー班長の怒号が響く。科学班の昼は忙しない。止まることのない紙に文字を書く動作に、たまに聞こえて来る爆発音がアンバランス。科学班の夜は……。
 


四夜、くらくらとしためまい




 レンカはいつ見ても、忙しそうな彼等に一瞥をくれると苦笑いを浮かべた。コムイから呼ばれていると聞いてやって来たのだが、大変なときに来てしまったのかもしれない。いけないクスリを摂取したかのように、口からよだれをたらし「イヒ、イヒヒ……!」なんて虚空をみつめ何かを掴む仕草をしている者もいる。どう見たとしても何かしらの限界は突破しているように見える。今の科学班の人たちなら、きっとイノセンスだって余裕で扱えるはずだとレンカは思った。
 覗いてはいけないものをみてしまった、と引き返そうとしたところで、レンカはそういえば研究室に用があったのだということを思い出した。邪魔をしては悪いかと一瞬ためらった後に、


「……ごめんなさい、コムイさん! ちょっといいですか?」


 と呼びかけた……のだが、騒音に掻き消されて聞こえなかったようだ。どうしようかともう一度大きく息を吸って先ほどよりも強く呼びかける。


「コムイさーんっ!! ごめんなさい、ちょっといいですかッ!」

「あ、……レンカちゃん」

「忙しそうなときにごめんなさい。コムイさんが呼んでいるって聞いたので来たんですけど――出直した方がよさげですか?」

「いや、むしろ丁度よかったというかナイスタイミングだよ! というわけで後のことはよろしく頼むね、リーバー班長!」

「あっ! ちょっ!! コムイ室長!?」


 リーバーは手元をせわしなく動かしながらコムイに視線だけをやると、チクショウとでも言いたげににらみ付ける。コムイはレンカの手を掴むと、リーバーに向かってにこやかに片手をあげてダッシュを開始した。レンカはただでさえ忙しそうなあの職場を抜け出してきて大丈夫なものかと考えてしまうが、大人の腕力には勝てなかったのでリーバー含む科学班に心の中で謝りたおした。室長が抜け出すという緊急事態であっても、決して手を止めない彼らは本当に立派なのだろうと……、レンカは思った。
 ハハハハハと爽やかな笑い声をあげながらコムイは司令室までレンカを引っ張ってくるとその勢いのまま扉をぴしゃりと閉めた。強引に静止をかけたためにレンカは数度たたらを踏んだがなんとか踏ん張ってコムイを見上げる。にっこりと笑ったままであったコムイはレンカからの視線に気づくと、


「まあ、とりあえず座ってよレンカちゃん」


 とレンカを長椅子へと促した。レンカはそれに従って椅子に浅く腰をかけると、「どうしたんですか?」と先を急かす。コムイは自身も対面にある椅子に腰を沈めると、真剣な顔になる。それを見てレンカは、まあそうであろうなとある程度の話の内容を理解した。


「どこに行けばいいんですか?」

「今回は――」


 
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