灰色蒼恋歌
□任務、始動:中-7-
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電車の天井からどっこいしょ。
よっと、反動をつけて中に滑り込むボクたち。
さすがに走る電車のドアを力でねじ開け、入るわけにはいかない。
電車ってこうやって乗るんだっけ。
イメージと大分ちがうぞー。
なんて思っている内に、真正面の通路から駅員さんらしき人が走ってきた。
そして、ボク達のことを呼び止める。
「っこ、困りますお客様! こちらは上級車両でございまして、一般のお客様はニ等車両の方に……。てゆうか、そんな所から……」
「黒の教団です。一室用意してください」
「―――!! 黒の……!?」
駅員さんの目線がボク達の纏う団服のローズクロスをかすめる。
息をのんだ駅員さんは、ビシッと身を固くした。
「か、かしこまりました!」
そう言った後、俊敏な動きで駅員さんは駆けて行った。
「何です今の?」
「あなた方の胸にあるローズクロスはヴァチカンにおいて、あらゆる場所の入場が認められているんでございます」
「へぇ……」
『便利なものだね、これ』
おそるべし、ローズクロス。
旅のお供にローズクロス!
ヴァチカンをまわるのに、これ一つあればあら不思議。
どこへ行くにも身、一つでオーケー。
入場無料、安全保障!
なんてうたい文句が聞えてきそうだ。
……いや、最後の安全保障はどうなのかしらないけれど。
これがとても重宝出来るということには変わりはないだろう。