灰色蒼恋歌

□壊して?-10-
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指定された、建物の前にコムイさんは立っていた。

ボクは、片手を振りながら、コムイさんに走り寄る。


『はろー、コムイさん』

「呼びだしちゃってごめんねー」


そうおちゃらけた口調で言った言葉。

でも、その目の奥は全然笑っていなくて。

誰にでも分かる愛想笑いだね。イキナリなんてボク困っちゃう! とか、言ってみたら、この場の空気は多少は軟化するだろうか。


「とりあえず、中に入ろうか」


ボクは、コムイさんに案内された部屋の中に入る。

そして、促されるまま、椅子に腰を掛けた。


「――レンカちゃん。マテールの時の件で聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

『別に、かまわないよ。聞いてくる分にはね』


――いいかな? って言ってるけど、ボクは拒否する権利がないじゃないか。

だったら、ボクにだって考えがあるというか。逃げ道を用意させていただこうかな、というか。

それに、いつかは聞いてくるだろうな、とは思っていた。ばらしたのは、神田だろうか。


「レンカちゃんは、アクマに生命さえも危ぶまれるほどの怪我を負わされた――
と聞いているんだけど。付け加えるならば、常人では動く事さえ出来ないほどの傷を。まず、それに、間違いはないかな?」

『うん、そう見えたんなら、そうなんじゃない? 事実だったりして』


笑うボクに、そんな軽い茶化しなんて、無かったことにしてしまうコムイさん。


「でも、おかしいよね? 神田くんの話では、彼が少し目を話した隙にもうレンカちゃんの怪我は治っていたって言うんだ。そして、実際に君が気を失ってその後念のためにドクターに見てもらった時にはいたって正常で"無傷"だったって」

『…………』


やっぱり、言ったのは神田か。と考えながら、部屋にある窓に、目線を逃がした。


「短時間での驚異的なまでの回復力。――生きている事だけだったら"奇跡"。けれど、いくらなんでもソレは普通ではありえない事……だ」


コムイさんの表情の読めない、瞳。

―――だから? と。そう言いたかった。
けれども。
ボクがそれを言ったら、余計に話をややこしくさせるから。

 
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