僕等の魔法使い
□遭遇
1ページ/1ページ
失敗だった。それも、一歩間違えば命を落とす大失敗だ。
くそっ何でこんな目に……!
心中で毒づくといいタイミングで雪に足を取られた。人並み以上と自負している反射神経のおかげで辛うじて転びはしなかったが、苛だちは増す。
普段は暖かくて重宝している焦げ茶色の外套も今はその重さが鬱陶しいばかりだ。
俺に恨みでもあんのか!!
乱暴にフードを引き上げてまるきり見当違いの怒りをぶつけてみる。うさは晴れない。どころか、頭の中でいつも冷静な“俺”が呆れたように囁いた。
《馬鹿な奴。あの時引き返せば良かったんだよ》
「そうだなっ!全くその通りだ!!」
分かってるさそんなこと。全ては俺の浅慮と愚行が原因。分かっていても、当たり散らしたい気分になるんだ。お前には分かんねぇだろうがな。
寝坊した。小指をぶつけた。昼飯は茸一つ。雪が降り出した。
些細な失敗が連鎖して、俺を危機に陥れた。とにかく、今日は朝からツイてない。ちょっと信じられないくらいに。でもこの状況は間違いなく自分で招いた。その点に関しては、後悔も反省も深あああああくしている。そうしていつでも失敗は挽回してきたし、これからもそうやって生きていくつもり。
でも、この経験を次に生かせるかは疑問だった。
そもそも俺は生き残れるのか?
背後に猛然と駆けてくる大熊の気配を感じながら『無理かもしれない』と俺は思った。