*短編*


□誰よりも特別な
2ページ/4ページ




「先生ぇーっ!」



先生の掃除担当場所は

最近知ったばっかだった


たまたま掃除サボって

ベランダの階段に居たら

外でダルそうに

ホウキ持った先生を見つけた

やっぱり、何人かの生徒に

囲まれてて、


心の奥底に

黒く渦巻く

嫌な感情が、

そんなもの

気にせず生きていけたら良いのに


それからほぼ毎日

ここから眺めてた

ベランダの階段で

眺めるだけじゃなくて

ちょっとした会話がしたい

先生の、特別になりたい





私の呼ぶ声に気づいた先生が

私を見上げてた


掃除終わった直後で

先生の傍には

もう生徒も居なかった


思わず呼び止めたけど

思わず叫んじゃったけど


やばい何言おう、


フェンスを掴む手が

震えた



「あのねーっ!今日の家庭科ー!
チーズケーキ作ったーっ!調理実習だったーっ!」



私の方に手を伸ばして

『くれ』

そう口パクする先生



「バレンタインにあげるから!」



『いま、くれよ』


口パクでもすぐわかった

手を伸ばしてまた

催促してくる先生が

かわいくて、


私はふふっと笑って

ヒラヒラと手を降った


残念そうにした先生の後ろ姿

ホウキ片付けに行くんだろな


また、距離感が

近くなった気がした

ああ、バレンタイン

ちゃんと作らなきゃ


今度は先生の掃除場所に

行ってお話しようかなあ

鬱陶しいと思われたくないな

どこまでなら

許される距離感なのかな
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ