家族だって言って、

□4月 始業式 放課後
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「………え?」


「だから、私のお父さんになってって言ってます」


「…えーと……それは、?
養子縁組?しろと?え?」


「…まあ、そんなカンジ」


「……え?………ああ、うん
言いたいことは分かったけど…
なんで俺なの?
てか…えーっと?名前………」


「宮瀬飛鳥です」


「悪い冗談はやめて、ほら、宮瀬帰れ」


「……パパ?」


「…やめろ気持ち悪い」


「娘にそんな酷いこと言うの?」


「やめろ娘じゃねェよお前なんか
はいはい、帰ろっか
俺はお仕事あんの、新学期だからバタバタしてんの」


「……本気なんですけど」


「…あ?」


「…もう寂しい家に帰りたくないです」


「…………だから?」


「先生と家族になりたい
だからお父さんになって、」


「先生犯罪者になりそうなんだけど」


「大丈夫ですよ、これ、養子縁組の紙
もう名前書いてますし、あとは


「はあ!?何しちゃってくれてんの!?
いやいやいやまずこういうのはね?分かる?
今俺とお前は先生と生徒なの、
そういうの頼むんだったらもっと別の人間てかなんで俺なワケ?
もっとちゃんとした大人が居るだろって
先生の俺が言うのもあれだけど…ったく…てか言わせんなよな惨めになるわ!」


「………両親居ないの、一人暮らしなの、今日はバイト休みなんです
いつもカバンにこの紙は入れてました
お父さんになってほしい人が現れたら書いてもらって提出しようかなって
中学生くらいの時からずっと、」



そういえば随分

この紙も古くなったのかな

ずっと入れっぱなしだったし

しわくしゃなこの紙に

急いで書いた名前も

えっとこの先生の

漢字合ってるっけ



「…はあ、分かったよ
理由は後で聞くから…で?
家族ってことは?俺の家に住むワケ?」


「………いいんですか?」


「はァ!?お前なァ……自分から言っといてそれはないでしょ」



ぱこっ


銀八先生が持ってた生徒名簿で

頭を軽く叩かれた



「……ごめんなさい」


「はいはい分かったから
っても今日家に来るとかはねェよな?」


「………行く」


「…………いや、俺困るんだけど」
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