短編

□彼岸花
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今年も咲いた

赤く 美しく

儚い花−



*


「待ってくださいよ、組長!」



「早く来ないと置いていくよ?」



そう言ってさっさと先へ言ってしまう、沖田総司。


京の都で知らない人はいないと言っても過言ではないほど有名な人

いい意味でも、悪い意味でも・・・

そう。


京の治安を守る【新選組】の一番組組長沖田総司が彼である

そして、私は一番組の隊士の南奈だ。

女ではあるが、剣の腕が優れているということで、新選組に入隊した(させられた?)。


んで・・・まぁ今巡察中なんだけど・・・


組長がスタスタ行っちゃうもんだから他の隊士とは逸れるわ

巡察にすらなってないわで・・・

え、もうこれただの追いかけっこじゃないか。

という


「組長、いい加減にして・・・わっぷ!」



前も見ずに喋りながら歩けば、誰かにぶつかり鼻を打った。

顔を上げればそこには立ち止まって、赤い花を見つめる組長


気づけばもう町の端の方まで来ており、森が見えるくらいだ。

そして、そこに並ぶ赤一色


「秋、ですね。」

「そうだね」


そんな切なそうな顔しないでくださいよ・・・

こっちまで影響、される。


花言葉は、なんだっけ・・・


あぁ、そうだ。


「【情熱】【悲しい思い出】【独立】【再会】【あきらめ】」


「・・・?」


「この花の、花言葉ですよ」


「へえ・・・・」


まるで、貴方のようですね・・・

そんなこと、言えやしないけど


情熱的に新選組を思ってる

独りで抱え込んで立ち続けてる

だけど、心のどこかに微かなあきらめ


美しく 狂おしく 花を咲かせば

いつの間にか土に還ってしまう

とても、儚い


毒を奥に潜めて、土足で入り込むやつには容赦しない

簡単に心を許さない


考えれば考えるほど


此花は

貴方じゃないですか



ねえ、貴方はきっと遠くへ行ってしまうんでしょう


知ってる


いや


感じる


きっと、一番脆く儚いのは貴方だから



しっかり、捕まえておかないと

今すぐにでも、フラリと何処かに行ってしまいそうだ



「組長・・・」


私はそっと、彼の裾を掴んで引っ張る


「行きましょう」


「・・・うん」



次に、此処へ来る時はきっと枯れていて


次に、此処へ来る時は、独りなのかな



振り返れば

赤く綺麗に揺らめいて

一瞬の輝きを放つ赤色


サヨウナラ


もしも、再会できたら僕は-
 

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