短編

□後悔
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「南奈、見てくれ、新しい変若水ができたんだよ。
次の羅刹たちは簡単には死なない」


そういって心底嬉しそうに笑う薫

そんな彼を見るのが、辛かった


綱道さんとなにやら手を組んでいるみたいで

鬼だけの国を作るとか

復讐とか

千鶴ちゃんに同じ苦しみを味合わせるとか・・・



私は、そんな事してほしくないのに。


「ねえ薫・・・」


「なんだい?」


狂ったような笑みを浮かべる薫に恐怖を覚える

言葉を述べるのが怖い


反応が、怖くてたまらない


だけど、そんな弱い意志じゃあないから


「もう、こんな事やめよう?ねえ、二人で暮らそうよ。
もう苦しまなくていいんだよ、私がいるから、私が薫とずっと一緒にいる。」


「・・・・」


彼の顔から笑みが消えうせ


冷たい無表情が私を見据える


怖い

ただ

コワイコワイコワイ


「薫・・・?」


「・・・る・・・お前に何が分る!
必要とされたのは、俺じゃない!千鶴!
必要だったのは男じゃなく女の鬼!
復讐するんだ、憎らしい妹にも人間達にも!」


悲痛の叫び


貴方はずっと、苦しんできたんだね


知ってるよ、私はずっと隣で見ていた


だから、もう苦しまないで


私が居るよ


ココニイルヨ


「そんなことしても、虚しいだけでしょう?
目を覚まして薫・・・
薫、私は・・・「五月蝿い!!」かお、る・・・?」


ザシュッ


彼の刀が私の左胸に突き刺さる

美しく狂おしく飛び散る赤い雫達



痛い


痛い


痛い


心が、痛いよ


「薫、わたし・・・は、か、お・・・るが、大好き・・・で、わ、たしは・・・かおるが、ひつ・・よう、なんだよ?」


「っ!!」


痛いね、薫。

貴方も、痛いんでしょう?


知ってる。知ってるよ、貴方の事誰よりも見ていたから。


「南奈・・・南奈っ・・・」


もう、いいから、そんな苦しそうな顔しないで

苦しんでほしくないの、貴方はずっと頑張ってきたんだから。
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