短編
□追手
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「ハァハァッ・・・ハァ・・・」
走る
走る
どこまでも・・・
捕まらないように
ガサッ・・・
気配と音
ビクリと跳ね上がる体
振り返ってはいけない
逃げなくては
私は・・・認めない!
「っくぁ・・・ハァハァ・・・」
苦しい
足がおぼつかない
もう倒れちゃいそうだ
どこか、誰か、逃げなきゃ、助けて
どうして、私なの?
「南奈」
「っ!!」
掴まれる腕
駄目だ、逃げろ、逃げるんだ
「き、気安く名前で呼ばないで!」
私はそう叫んでまた走り出す
どこまでも
あいつが来ない場所へ
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「南奈様、この方が貴女様の許婚でございます」
「風間千景だ」
「えっ・・・どうし、て」
何で、勝手に決めてるの?
どうして、貴方じゃないの?
私の意志はどうだっていいの?
私は鬼の一族であり、数少ない純血な鬼
両親は死んだ。残っているのはずっと私についてくれている彼のみ
ずっと、一緒にいられるって思ってた
いつか、結ばれる日がきたらいいなんて思っていた
なのに、どうして、この人なの?
「どうした、南奈」
「・・・ばないでよ・・・・気安く名前を呼ばないでよ!!」
「南奈様!?」
「ほう・・・なかなか威勢のいい女鬼だ。気に入った」
そういってアイツは私に口付けをした。
彼の前で・・・
「触るな!!」
そういって、私は家から飛び出して逃げた。
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何で何で何で!
私は彼がよかった。
独りになった私のそばにいてくれたのは彼だった
あんなやつ、大嫌い・・・
貴方はそれで安心するって思ったの?
貴方はそれで安心するの?
自分の一方的すぎる想いに悲しくなってくる。
悲しいよ、辛いよ、寂しいよ・・・
鬼の子孫を残すのって大事な事だよ・・・
純血種同士なら、なおさら・・・
でも、でも・・・
あぁ、どうして私は鬼なんだろう
あぁ、どうして私は純血なんだろう
たとえ彼じゃなくても、
ちゃんと愛し合って結ばれたかった・・・
「っ・・・うっ・・・ぁ・・・」
涙が、溢れる。
もう行き止まりだ
薄暗い裏道
もうアイツは来ないだろう
ここまで、来たんだ
私だって鬼。
それなりに力はある、だから・・・
「南奈」
「・・・」