短編

□隠れ恋心
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ここは、中庭だろうか。


人気が少なく、静かで落ち着いた場所だ。


「うっ・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」


何で・・・

あの子は、そんなに剣術に優れているの?

だから此処に居られるの?

私も、強くなったら此処に居られるの?

あの子に勝ったら此処に居てもいいの?


「南奈さん・・・?」


「貴女は・・・」


こんな子に涙を見られるなんて癪だ

私はあの土方歳三の妹なのよ

一緒に道場で頑張ってきた一人なのよ

こんな子に負けない・・・


「貴女、私と勝負して」

「え?」


キョトンという顔をする。


「私が勝ったら、此処から出て行って!」


「え、どうして?あの、私は・・・」


何かを述べようとする彼女を無視し、私は腰から刀を抜いた。


「いきます!!」


地面を蹴り彼女へと刀を振り下ろす


此処に居られるくらい剣術に優れているなら

避けるか止めるくらいできるでしょう?


「きゃっ」


だが、顔を背け、腕で受け止めようとする彼女。


何この子・・・


斬るよ?



ガキン!!



本気で斬ろうかと思った瞬間だった


私は彼の刀によって受け止められ


私の刀が弾かれた。


「一さん・・・」


そう。受け止めたのは、彼女をかばったのは私が一番会いたかった一さんだ。


「どうして・・・この子は此処に居られるくらい強いんでしょう!?
どうしてかばうのよ!」


私の言葉に、彼はいつもの無表情でこたえる。


「こいつは護身術程度しか身に着けていない。
あんたの方が剣術は優れているだろう。」


「じゃあ、何で・・・」


「それはあんたが知るべき事じゃない。
もう帰れ」


ズキンッ


痛いよ


刀で斬られるより、ずっと


痛いよ
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