短編

□隠れ恋心
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「しっつれいしまーす!!」


お腹からだした大きな声

私はズカズカと中へ足を進める

向かった先は副長室


「おにーちゃん♪」

「・・・・はあ。」

私は兄・・・新選組鬼の副長の異名を持つ土方歳三の妹だ。

たまに、こうして会いに来る。

道場に居た時はいつも一緒だった。

だけど、こうして新選組として京都の治安を守っている今

危険がある。

まあ、それが一番の理由で私はついていけなかった。

いくら剣術が使えるとはいえ、女だしね・・・

それに、お兄ちゃんはなんだかんだ言って優しくて心配性だ。

それは新選組の本当に親しい人達・・・幹部の皆しか分らないんだろうけど。

だから、やっぱり私を危険にさらしたくなかったんだと思う。

だけど、それが寂しかったりもする・・・

私は一人・・・

本当は、もっと皆と一緒に居たいのに。

一さんと、一緒に居たいのに・・・


「・・・い。おい!南奈!」


「へっ!?!?」


突然、お兄ちゃんに名前を呼ばれハッとする。

私、何考えてるんだか・・・

ただの私の我儘なのに。

お兄ちゃんが私の事を考えての選択なのに。


「大丈夫か?お前、泣きそうな顔してるぞ」


「え・・・いや何でもないよ?私元気だし」


そう言ってぴょんぴょん飛び跳ねる。

そのとき

スーと障子が開く


「土方さん、お客さんですか?お茶をお持ちしました」

長い髪を割りと高い位置で結い上げた

袴を着た子。

私と同い年か、ちょっと下くらい。

すぐに分る

本人は男装しているつもりかもしれないけど


「女の子・・・」


「え?」


何で?


私は駄目なのに


何でこの子はいいの?


ずるい。


ずるい・・・


「南奈・・・?」


「お兄ちゃんなんて、大嫌い・・・!!」


「おい!南奈っ!!」


私は副長室から走り去り、前も見ずにとにかく走った。
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