短編

□白銀の刃
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「ばかっ・・・総司のばかっ・・・。」

目の前が歪んでいく

私の世界が崩れていく

「うん・・・馬鹿だよ・・・
南奈・・・僕を、殺し、て・・・。
もう、僕は新選組の役には立てない。
だからっ・・・っ・・・はや、く。
僕の、心臓を、貫いて・・・」

嫌だ

嫌だよ

総司・・・

総司・・・

「総司・・・私っ・・・」

透き通る雫を瞳から零す私に
さっきよりも強い口調で総司は叫んだ。

「これ組長命令だよ、南奈!早く刀を、抜くんだっ・・・」

これが、新選組の為

これが、総司の 愛しい人の為

彼がそれを強く望むなら

私はそれに従おう。

鞘からそっと刀を抜く。

「嗚呼ああああぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

狂ったように叫びながら

私は

総司の心の臓を貫いた。

白銀の刃が

愛しい彼の心の臓を

貫いたのだ。

彼は深く安堵したように微笑むと

ありがとうと口を動かす

そして、残り少ない生命力で

呟く

「南奈・・・好きだよ。」

「私だって・・・私の方が、総司の事、好きだよ、大好きだよっ・・・・。」

その言葉を聞くと、今まで見た事の無いような幸せそうな笑顔で
彼は消えていった。

初めて聞いた

最初で最後の

ありがとう と 好きだよ は

私の胸に

一生消える事なく

刻まれた。
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