短編

□桜の舞う日
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「お父さん・・・お母さん・・・」


今日、大好きな父と母が他界した。

殺された。

うちは平凡な家ではあるけど、父が少し剣術をやっていた。

そして代々受け継がれていた大事な家宝である刀がった。

それを浪士の奴等が嗅ぎ付けて、刀をよこせと言って来たのだ。


父は先祖とか、そういうの大事にする真面目な人だったから易々と刀を渡すはずが無い。

父のそういうところにほれ込んだ母もまた、その刀を守ろうとする


そして・・・


二人は浪士たちに殺された


虫の息になったというのに、両親は私に刀をたくし


「逃げなさい」

「ごめんね」


と言った。


逃げなきゃ


逃げなきゃ


逃げなきゃ


私の中の何かがそう叫んだ

だから無我夢中で走る

あいつらから逃げ切れるなんて思ってない

でも、誰か助けてくれたら・・・



気がついたら

一本の桜が美しく咲き乱れる丘に着いた。

後ろを振り向けば、この場には似合わない浪士たち


もう、

駄目なのかな


ごめんなさい、お父さんお母さん

私もそっちに・・・


「何やってるの?」


私でもない

浪士たちでもない

熱のこもった声が聞こえた


浅葱色の羽織?


「し、新選組か・・・」


「おい、コイツ沖田じゃねえか??」


おきた?

しんせんぐみ?


京の治安を守っているあの?


「そうだけど?それで、何してるの?」


「こ、この小娘から俺等の刀を取り返そうと・・・なぁ?」


「あ、あぁ。」



嘘つき

嘘つき

嘘つき


違う違う違う


沖田、といわれる人は私はをじっと見つめ「本当?」と聞いてきた。


私は首をぶんぶんと横に振って否定する


この人なら助けてくれるかもしれない。

そんなことを思って必死に叫ぶ


「こ、これはうちの家宝なんです!突然その人達が押しかけてきて・・・」


「な、馬鹿いってんじゃねぇ!」


一人の男が焦りだす。


沖田さんはにこりと微笑みながら


「いい加減にしないと斬るよ?」と言った。


怖い。

こんな浪士たちよりはるかに。

何を根拠にいえるのかわからないけど、背筋が凍りつき
心臓をわしづかみにされているようだ。


それは浪士たちも同じようで、チッと舌打ちして走り去っていった。
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