短編

□桜の舞う日
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いつものように、僕は散歩ついでにお気に入りの場所へと足を運んだ。

大きな桜の木が一本あって、美しく咲き乱れる・・・
花見には充分すぎる場所。
一応そこは丘だから景色だっていい。

ちょっとまえに新選組の幹部で花見をしたっけな

あそこに行くと、自然と落ち着いて冷静になる

あ、いや僕はいつも落ち着いているつもりだけどね。


ゆっくりと、歩いていけば人の気配を感じた

少しずつ近づくが、誰も気づきはしなかった。

其処に居たのは二人の浪士と一人の少女

少女は恐怖に震え、瞳は絶望に染まっている


今これがどういう状況なのか、一目で予想がついてしまうだろう。

だけど、あえて問う

どんな反応するか、見てみたかったから。


「何やってるの?」


3人の視線が一気に注がれる

少女は驚き、浪士は怯え始めた



「し、新選組か・・・」


「おい、コイツ沖田じゃねえか??」


あぁ、そういえば巡察から帰ったばかりで隊服着たままだっけ?


「そうだけど?それで、何してるの?」

「こ、この小娘から俺等の刀を取り返そうと・・・なぁ?」


「あ、あぁ。」


嘘が下手だね?

目が泳いでるし、声が震えている

そんなの誰が信じるの?


「本当?」


分りきったことを、また、彼女に聞いた。

僕の質問に彼女はぶんぶんと首を振り、

「こ、これはうちの家宝なんです!突然その人達が押しかけてきて・・・」

と叫んだ。

彼女の目には、どこか希望の色が見えた気がした。

僕が来たから助けてくれると思ったのかな?



「な、馬鹿いってんじゃねぇ!」


一人の男が焦りながら口を開く


馬鹿は君たちだよ


「いい加減にしないと斬るよ?」


微笑みながらそう言えば、この場に居る全員が恐怖した。


失礼だな、僕の顔ってそんなに怖いのかな?


チッと舌打ちして浪士たちは走り去っていった。
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