愛別離苦

□元治元年 七月 4
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千鶴はまだ何も知らない。
自分は普通の【人間】と思っているんだろう。
そして綱道さんを父親と信じている。
あの子には、まだ何も話せない。


「・・・あまり長く人間と共にいるのもどうかと思うけど。」

「どういう意味?」


スッ


反射的に声のした方に刀を向けていた。
そこには怪しい表情をした沖田さんが立っていた。
はあ・・・。
何で呟いてしまったんだろう。
僕とした事が・・・。

「怖いなぁ、南奈ちゃんは」

ニコニコと刀には目もくれず、ただ僕を見据える。
貴方の方が十分怖いわ・・・。

ニコニコとしているが、その前は僕を睨んでいるようにも見える。


「・・・。」


「・・・で?さっきの言葉はどういう意味?今朝も【人間なんて】って言ってたよね。
まるで、自分が人間じゃないみたいだね。」


くそっ・・・
何なんだコイツ。
だけど・・・全てを明かす訳にはいかない。
あくまでも【人間】を演じなければ。


「単純に僕は人嫌いなだけですよ、特に深い意味はありません。」

笑顔でそう答えると、彼も笑みを見せ、そしてかなりの殺気のこもった目でをして・・・


「ふぅん?・・・何か企んでいる様なら・・・僕は君を殺すよ?
女の子とか、仲間とか、関係ないから。」


僕はその言葉に対して、特に反応しなかった。

所詮【人間】。
僕を殺す事なんて出来ないのだ。

「別に何も企んでませんよ。では、僕は挨拶してから出陣準備してきますね、お大事に♪」

皮肉をたっぷり込めて、僕は挨拶に向かった。
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