薄桜鬼
□「何って【愛してるゲーム】ですよ」
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授業は全く頭に入ってこなかった。
何を言おう、何を喋ろう――…
そんなこと考えているとあっと言う間に授業は終わる。
誰もいなくなった教室に一人、
来るはずの彼女を待つ。
5分もした頃だろうか。
廊下から上履きのぱたぱたと小走りに歩く音。
――来た
そう思って顔を上げると、
黒板近くの入口にいて、こちらの席に向かって歩いて行く有記さん。
「さぁ一!!始めよう!!」
遅れたにもかかわらず、
俺の前の席のヤツの机を勝手に使い、
俺の向い合せになって椅子に座る。
「まずは私からな!!一、愛してる!!」
「………。」
もう黙るしかない。
誰だ愛してるゲームなんて考えたヤツ。
「どうした一??お前も言えよ。私に。
【愛してる】って。」
「ぐっ……!!」
心底不思議そうにこちらを見て首をかしげる。
どうしてこの人はこんなに普通に、平然に、なんでもないかのように言えるのだろう。
「一…、もしかして私のこと愛してないのか??」
「そ、そんなっ――!!」
「ん??」
「そ、そんなことないです……。
俺は…、あなたのことを…、ああああ、愛してます……///」
勿論、有記さんの事は大好きに決まっている。
愛している。
でも愛しているのと、それを言えるかと言うのは違うことなのだ。
いつも笑って、
それ以外は空を愛しむ様に眺めていた彼女が
滅多に見ない――いや、初めて見る寂しそうな表情につい勇気を振り絞って言ってみたが――…
はめられた。