薄桜鬼

□不幸よりも大きな幸せ
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喉が熱い。


声が出ない。


痛いよ。


怖いよ。


助けて。




一君――!!




そして私は目を覚ました。


見覚えのある自分の寝床。


いつもの朝のように目を開け、
まるであの事が夢のように思える。


けれど、
そうでないと感じさせるのは熱く痛む自分の喉。


起き上がると、
見覚えのある色が目に入る。


真っ黒い布。


私は自然に隣を見た。




「は……じ、め…く……ん。」




自分でも最悪の声。


がらがらして風邪をひいた時よりもひどい。


でも、
当然のように隣にいた一君は目を丸く開き、
口を開けて私の名を言った。




「――祥……。」




小刻みに震えている一君の声。


一君はもう一度私の名を呼び、
下を向いた。


どうしたのかと、顔を覗き込む。




「祥、すまない……。
俺はあんたを、守れなかった――!」




一君から出された、
振り絞るような悲痛な声。


まるで、
哀しさを怒りに変えたような声。




「は…じ、………めくん?」

「すまない。
俺のせいで……!
あんたは死にかけた……!」

「そ…んな、こと……ないよ!」




最初よりも喉がなれる。


さっきよりも声を出した。




「私は、……は、…じめ、くんに………た…すけ…ら、れた…。」

「助けられたのは俺のほうだ、祥。
俺がもっと強ければ……。
あんたを守れたのに……。」




長い前髪に隠れた一君の目は見えない。


でも、
泣いてるように見えた。



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