薄桜鬼

□不幸よりも大きな幸せ
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 設定
  ・一君とは上洛する前からの友達。
   でも、最近一君のことを好きな自分を知る。
  ・名前は『祥』で固定。
  ・最初はシリアス。最終的に甘。








『いいから下がっていろ!!』




路地に鋭く響いた一君の声。


初めて聞いた一君の大きな――私に向けられた――怒鳴るような声。


その声に私は自分の刀を抜く手を止めた。


嫌、止まった。




「は…、一君……。」




そのまま刀から上げた顔には、
一君の背中。


そして、一君の前には顔も知らない男たちが4人。


全員刀を抜き、
その刃の先を私と一君に向けていた。


なのにこちらは私と一君だけ。


そして一君は私に『下がれ』『戦うな』と言っている。




「行け、祥。
このまま行けば総司の隊と会える。」

「そんなっ!」




――4人もいるのに1人だけなんて無理だ…!




私は息を吸う。


前を見、
ためらうことなく刀を抜いた。


いつもと変わらないような声で、
自分に言うかのように一君に話す。




「一君、俺も戦うよ。」

「……!祥!!」




――女のお前には無理だ!




一君の声が、背中がそう語っている。


無理かもしれない




でも――!!!




「はぁぁぁぁぁ!!!」




今まで叫んだことがないくらい叫ぶ。


喉が裂けたって構わない。




――みんな、誰か来て!!




がむしゃらに振りかざした刀は、
一人の男の頭を飛ばす。


回りの男らが何か叫ぶが聞こえない。


空気を裂く音に後ろを振り向く。


私に向かって刀を振り下ろすヤツ。




「この野郎ー!!」

「……!!」




その時、
驚くほど大きな力で後ろにひかれた。


首の後ろをつかみ、後ろの壁にひかれ
壁に背中を思いっきりぶつける。




「下がっていろと言ったはずだ!!」

「――は、一君…。」




一君は見ていていっそ、
おかしいくらい奇麗に男たちを切った。



空に飛ぶ赤い水が一君の頬や、着流しに付く。


その時、
浅黒い手に私は引きずられた。


無言で首元に寄せられる刃。




「うぉりゃぁぁぁ!!」




その男の声とともに、
別の刀が一君の背中に真っ赤なシミを作った。




「――ぐあぁあっぁ!!」




一君の叫び声。


なのに私はそれを他人ごとのように見ていた。




だって、一君がやられるはずがない。




赤い水はまだ出てくるのに、
一君は地面の足をけり立っている。



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