薄桜鬼
□とある夏の風景
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盛大に後ろに引いた俺を
千祥が不思議そうに
見ている。
「えっ、どうしたの?」
「……いや、別に――。」
ふぅん、まいっかと
あっさり引く千祥に
ほっとする。
「で、なんで??」
「……な、なにがだ。」
「だから、話が戻って
それ、足開くの??」
「あ、あぁ。」
「へぇ……。」
そう言って千祥は
俺の全身をしげしげと眺めた。
「ねぇ、一君!!」
勢いよく顔を上げ、
俺を見る。
「服貸して!!」
「……………は?」
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「……これでいいか?」
「ありがとう一君!」
ここは俺の部屋。
その部屋に俺といる千祥。
千祥の手にあるのは
俺の着物だ。
着てみたいというから
貸してやっただけの
はずなのに……。
「んじゃ、着替えさせてもらうね。」
俺の部屋で着替えようとする
千祥を横目でにらんだ。
でも睨んでもしょうがない。
というか、俺がいるのに
もう着替え始めているのに
気づいて俺は急いで部屋を出た。
(……はぁ。)
俺は部屋の戸の前に座っていることにした。
しばらく、庭にいようかとも思ったが
それでは千祥に悪いし俺の部屋は
総司や平助などがよく勝手に入ってくる。
万が一を考えてのことなのだが、
部屋の中から聞こえてくる
衣擦れの音がなんだかいろいろなことを考えてしまう。
(……はぁ。)
もう一度、ため息が出る。
俺だって男なのに、
なんでこんなに無防備なのか聞いてみたいくらいだ。
(生殺しだ…………。)
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