まさかのディノツナに子供が出来たパロ。
それなのに主役は白蘭さん。
苦手な方は気をつけてください。
あと白ツナ派の方はあんまり面白くないかもしれない。





子供の名前はナツちゃんです。女の子。
なんという安易。
ナツちゃんと白蘭さんの話。















『結婚おめでとー!』


華やかな披露宴。
カメラを構える友人達。
煌びやかで美味しそうなウェディングケーキ。
そして、隣で幸せそうに微笑む純白のドレスに身を包んだ愛しい新婦。


「綱吉君…」


そんな幸せそうな綱吉を、白蘭は会場の一番奥で一人眺めていた。
鼻がツンとして、涙があふれる気配がする。
もう我慢が出来なくて、白蘭は会場から走って逃げ出した。




「うわあああああんっ!何で!?何で隣にいるのが僕じゃないの!?」

誰もいない待合室で、子供のように声を上げて泣きじゃくった。
ずっと夢見ていた綱吉とのゴールイン。
だけど、実際隣にいたのは

「なんで…なんで跳ね馬なんかとっ…」

仕事の関係で日本を離れイタリアに戻って数年。
やっと仕事の目処が付いて帰ってこれることになったのに。
久しぶりに綱吉から届いた手紙は、ディーノとの結婚披露宴の招待状だった。

学生時代に綱吉を取り合ったディーノに、まんまと綱吉を奪われてしまうなんて。
死ぬかと思うほどのショックだった。
今日だって、本当は結婚式なんてぶち壊してやろうと思って来たのだ。
どこかの映画ばりに、綱吉を連れて去ってやろうと思っていたのに。

「あんな幸せそうな顔されたら…どうしたらいいのさ…」

ずっと好きだった人の、満面の笑顔。
ぶち壊せるわけがなかった。
けれど、もうこれ以上この場所に居るのは拷問すぎる。
鼻をずびずびと啜りながら、泣きすぎてフラフラした頭のまま椅子から立ちあがろうとした瞬間。


「おにいちゃん、だいじょぶ?」


幼い声がして。
白蘭はぼうっとしたまま声の在処を探した。

「つ、なよし…くん?」

ショックが大きすぎて、頭がおかしくなってしまったのだろうか。
綱吉とそっくりな顔をした小さな女の子が正面に立っていて、ニッコリと微笑んでいる。
ついに、天国から天使がお迎えが来たのかもしれない、とすら思った。

「ナツだよ」
「な、つ…?」
「つなよしは、ナツのママ」
「ま…」

ママ?
綱吉が、ママだと言ったのか?
その言葉に白蘭は体を硬直させて、じっと目の前の少女を見た。
ああ確かに、見れば見るほど綱吉ではない。
いや、びっくりする位に似ているけれど、確実に、少女には何か違う要素が混じっている。

綱吉のように大きくてクリクリしてるけれど、長く密生した睫で覆われた若干垂れた瞳。
綱吉のようにフワフワしているけれど、金色に輝く肩で切れ揃えられた美しい髪。
これは、もしかしなくとも。

「な、なつちゃんのパパは…」
「パパのなまえ?ディーノ!」

それはまさしく、今一番聞きたくなかった名前。

「う、わあああああああっ!」

子供の前ということをすっかり忘れて、白蘭はまた声を上げて泣いていた。
目の前で大の男がいきなり泣き出して、ディーノとツナの娘・ナツは驚きに目を見開く。
けれど、その目はすぐに優しさに細められた。
それはたぶん、綱吉譲りの隔たりない優しさ。

「おにいちゃん、なかないで?」
「う…うぅ…っ」

ナツの小さな手にナデナデと頭を撫でられて、白蘭が唇を噛み締める。
もう、どっちが子供だか解らなかった。

「おにいちゃんがげんきになるまで、ナツがそばにいてあげるから!」

少女が見せたその明るい表情は、まさに白蘭が愛していた綱吉の笑顔だった。
目の前の少女と綱吉の姿が重なって、白蘭の涙が自然と止まっていく。

「ほら、おにいちゃん。おはなチーンして」
「うん…ありがとう…」

ナツにティッシュを当ててもらってされるがまま、白蘭が子供のように鼻をかんだ。
嫌がる素振りなど全く見せずに白蘭の鼻を拭って、いい子いい子とナツがまた白蘭の頭を撫でる。
白蘭は気付かなかったけれど、これはたぶんディーノから受け継いだ広い心と面倒見の良さだった。

「おにいちゃん、パパとママのことでないてるの?」
「……。」

さすがの白蘭も、この子の前でハッキリそうだと言い切ることは躊躇った。
この子には何の罪もないわけだし。
それに綱吉に似て、いい子だし。
しかしナツはそんな白蘭の様子で、何かを察したらしい。
もしかしたら綱吉の超直感も受け継いでいるのかもしれない。

「じゃあ、おにいちゃんのおよめさんにはナツがなってあげる!」
「…えっ!?」

満面の笑みで、ナツが小指を差し出してくる。
これはもしかしなくとも、指きりげんまんというやつなんだろうか。

「ナツじゃやだ?」
「そ、そんなことないよっ」

まだランドセルも背負えないであろうこんな子供に、何を焦っているんだろう。
それでも、寂しげな表情をしたナツに覗き込まれて、白蘭は慌てて小指を差し出していた。
細くて折れてしまいそうなナツの指に、しっかりと絡める。

「おにいちゃん、なまえは?」
「…びゃくらん」
「じゃあびゃくらんがナツをおよめさんにしてね、ゆびきりげんまーん♪」

その小指が、自分から離されるまで。
白蘭はただじっと、見つめていた。

「やくそく、だよ?」
「っ、」

ちゅ、と白蘭の頬にキスをして、ナツが恥ずかしそうに首を傾げた。
ただの子供のキスだというのに、キスされた部分が熱くなってしまう。
じゃあまたね!と嬉しそうに手を振りながら走り去っていく少女の姿を、真っ赤になった頬を押さえながら見えなくなるまで、白蘭は静かに見つめていた。


「……おもちゃの指輪でも、買ってこようかな」


幼いながらのこの小悪魔加減。
一体どちらに似たのか、定かではない。











「パパー!ママー!」
「もー。どこ行ってたんだよ探したんだぞナツ!」
「ナツー!ほら、パパんとこおいで」

ディーノが手を広げると、ナツがすぐに飛び込んで抱きついてくる。
本当に可愛くて仕方なくて、ディーノはナツを抱きしめて思い切り頬ずりした。

「ディーノさんは甘やかしすぎですっ!」
「こんなめでてー日なんだから、そうカリカリすんなってツナ。なぁナツー♪」

いつものように、ぷにぷにのほっぺにチューしようとしたディーノの唇を、ナツがはっとした表情で押し返した。
そして、キリッとした表情でディーノを睨み付ける。

「パパ!もうナツにチューしちゃだめ!」
「な、ナツ…!?」

さっきのさっきまで、自分からチューをねだってくる位だったのに。
まさかの娘の言動に、ディーノも綱吉も目を丸くする。

「ナツね、びゃくらんのおよめさんになるの!だから、もうびゃくらんとしかチューしちゃダメなの!」

こんなに幸せな日だったのに。
愛娘のたった一言で。
二人にとって色んな意味で忘れられない日になってしまったのであった。



「そ、それだけはパパ許さねぇからなああああ!」













白馬の戦いセカンドシーズンがはじまるよ!
綱吉さんは娘が良ければいいと思っている。

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ