短編
□ちぐはぐみしり
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荒廃した世界。これは、小さくも自立した都市の片隅にてアンティーク屋を営む男二人の話。
「見てくださいナカジくん!」
がらがらばたばたと大小色彩形状様々なものを華麗に退かし踏みつつ、ナカジのもとへ歩を進めるゴクソツ。足取りは心なしかくるくると楽しそうで、大きな瞳はきらきらとゆがんでいる。
「叫ぶな騒ぐな暴れるな」
ちぐはぐなソファに座ったまま、ナカジはゴクソツに目もやらない。
「気にならないんですか?」
ソファの近くにある木製の椅子にゴクソツは座る。ぎしり、ときしむ音がした。そして、丁度いい場所に挟まっているよくわからないぬいぐるみに肘を置く。
「ソレ、潰すなよ」
すかさずナカジが咎める。
「肘掛けに丁度いいのですよ」
「可哀想だろ」
少し驚いたが別段気にしたようすもなくゴクソツは返した。しかし、可哀想という言葉に再び驚く。
「…気に入りまして?」
「…別に。…で、なにがあったんだよ」
ゴクソツはにやにやと笑う。ばつが悪いのか、ナカジは興味もない先ほどの話に変えた。
「そうでした!楽譜ですよ楽譜!どんな曲なんでしょうねえ」
旧時代のCDなどはよく落ちているが、楽譜となるとなかなか見かけない。話を変えて正解だった、とナカジは内心安堵した。
「奥からギタア持ってこい」
「弾いてくれるんですね!」
ゴクソツは待ってましたと言わんばかりに、やはり色々なものを踏んだりしながら奥へ行った。あまりに勢いよく立ち上がるものだから、ぎしり、と椅子はまた鳴った。
「…そろそろ代えを探すか」
そう言って背伸びをすると、みしり、とソファが鳴いた。